研究課題/領域番号 |
16K21006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邊 亜美 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特任研究員 (40611421)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分化誘導 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者らが確立したヒトiPS細胞からの機能的膵島(以下、iPS膵島)形成系において、1)これまでに濃縮に成功している内分泌前駆細胞集団から膵島前駆細胞を分離する 2)確実に機能的膵島に成熟させる系の開発 3)膵島前駆細胞を無尽蔵に増やす系の開発 を行うことで、in vitroでのヒトiPS膵島形成効率を安定化させ、劇的に向上させる事、さらにiPS膵島生産コストを大幅に削減する事を目的として研究を行なってきた。本研究で申請者が新たに本研究課題で明らかにするべき課題は1) 本誘導系におけるNGN3発現細胞に含まれる膵島前駆細胞の特徴を詳細に解析することで、特殊なiPS細胞を用いずとも膵島前駆細胞を分離可能とすること2) この細胞を無尽蔵に増殖させ、膵島に分化させる至適な成熟培養系の開発を行うことである。このことから、a) 膵島前駆細胞を分離可能な膜タンパク質の探索 b) 膵島前駆細胞からの膵島形成過程の解析 c) 膵島前駆細胞からの膵島形成培養系の最適化を行なってきた。これまでに, Ngn3陽性細胞のマイクロアレイ解析を行った。得られた結果から, 膵臓前駆細胞に強く発現する膜タンパクを絞り込んだ。本マーカを発現する細胞には、膵臓前駆細胞マーカー遺伝子の強い発現が認められること、さらにマーカー発現細胞を純化したのちに、in vitroにおいて効率的にインスリン発現細胞塊に分化可能であることを確認した。 現在この膵臓前駆細胞を無尽蔵に増殖可能な系の作成と、本細胞を効率的に膵島細胞に分化誘導可能な至適成熟培養系の樹立を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で申請者らは膵内分泌前駆細胞マーカーを見出し、この細胞の効率的な分化誘導法の検討および増殖法を検討している。この研究では、iPS細胞から膵内分泌前駆細胞を分化誘導したのち、この細胞を純化し解析を行う。しかし、iPS細胞から膵内分泌前駆細胞への分化誘導系で使用する低分子化合物のロットが変わったところ、 分化誘導効率の大幅な低下が生じ必要な細胞量の確保に問題が生じた。検討を重ねプロトコルを変更することで分化誘導効率は元のレベルに回復したが、プロトコル変更に想定以上に時間を要することとなったため、以上の区分とした。現在は概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で申請者はこれまでに, Ngn3陽性細胞を分取可能な膵内分泌前駆細胞マーカーを特定した。本マーカを発現する細胞には、膵臓前駆細胞マーカー遺伝子の強い発現が認められた。さらにマーカー発現細胞がin vitroにおいて効率的にインスリン発現細胞に分化可能であることを確認した。現在本マーカー発現細胞を無尽蔵に増殖させる系の構築および、分化効率を安定化させる分化誘導系の検討を行なっている。これまでに本マーカー発現細胞は自己増殖能をもたないことがわかっている。このことから細胞の増殖能獲得が現状最大の課題となるが、既報の膵臓系前駆細胞増殖因子増殖因子の培養系への添加、および一過性の外来性遺伝子発現によって増殖可能であるか検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験内容の遅れ(試薬ロット変更によるプロトコルの変更)が生じたため前年度追加実験を行う必要に迫られた。次年度は前年度に行えなかった実験を行う予定である。次年度予算は試薬の購入に充てる。また国際会議において成果報告を行うため、旅費等に充当する。
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