研究課題/領域番号 |
16K21013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原 辰徳 東京大学, 人工物工学研究センター, 准教授 (00546012)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 品質機能展開 / 知識移転 / 価値共創 / IoT / ユーザデザイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、使用行為と密接に結びついたサービスの概念設計の方法を、機能構成の立場から確立することにある。近年、情報技術、通信技術、センシングなどの各種技術の発達によって、ユーザの製品使用に関するデータが集まるようになったが、本研究は言い換えれば、そのようにして得られたデータや知見を次の製品・サービスの開発にどのように活かすかを明らかにすることである。本年度ではまず、製品の使用に係る「ユーザの活動サイクル」に注目した上で、知識移転の観点から提供者とユーザ間の関係モデルを構築し、製造業のサービス化のプロセスを建設機械を例に論じた。その中で、ユーザによる2種類の設計活動Design-in-useとDesign-of-useを促進するような環境整備が、サービス化を次のフェーズに進める上で重要であることを示した。また、提供者の活動サイクルとの連関を明らかにすることで、使用を経てサービスの機能構造がどのように変遷していくかを明示できる。以上は、研究代表者が取り組んできた「使用と設計」に関する研究成果を拡張したものである。次に、先の研究で構築した提供者とユーザ間の関係モデルに基づき、製品開発に広く用いられている品質機能展開に、提供者がユーザに求める「製品・サービスの使用方法に対する要求品質」と「能力・知識に関する品質要素」を組み込む方法を提案した。これは設計手法への発展を目指す取り組みであり、幾つかの例題記述を通じて、従来の品質機能展開では想定され得なかったユーザ要素の影響を含めた設計情報を得られることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に比べてモデル精緻化のための事例記述数が少ない点は否めない一方で、研究過程で品質機能展開への応用を着想し、年度中途からはそちらを重点的に進めた。これは本研究が目指す設計方法の構築を実現する上では重要な取り組みであり、そちらについて一定の成果が得られたと考えており、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
モデルの精緻化と検証をより推進するために、中規模かつ適切な情報量を有した事例をいかに多く確保していくかが課題である。一般に公開されている文献などでは、設計に活かせる粒度の情報を得ることはできないため、研究代表者が別途行っている企業との共同研究などを元に、共同研究の契約に反しない範囲内で積極的に事例を相互活用していくことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた国際会議 Frontier in Services2016での動向調査を、研究方針の一部変更に伴い、翌年度に延期したため。そのため、旅費40万円が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
変更した研究計画に関連した調査を行うために、国際会議、CIRP General Assembly 2017(8月開催)に参加する。
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