日常生活の問題から社会的な問題までの多様な問題に対して、数学という眼鏡を通して捉えたり、数学を活用して解決する能力、すなわち数学的モデル化能力の育成は、より一層重要になってきている。しかし、児童・生徒の実態をみると、数学的モデル化能力は十分に育成されていない。 本研究の目的は、仮定の意識化と設定に関わる能力の育成に関する数学的モデル化の学習指導を構築し、その有効性を実証することである。 研究目的を達成するために、次の四つの課題を設定した。第一の課題は、先行研究における数学的モデル化の能力について考察し、仮定の設定に関する能力を包含する数学的モデル化能力について同定することである。第二の課題は、数学的モデル化の能力の実態について全国学力・学習状況調査を基に明らかにするとともに、全国学力・学習状況調査では、どの能力が評価できていないかを明らかにすることである。第三の課題は、数学的モデル化過程を遂行していく際の重要な活動を明確にするとともに、数学的モデル化の学習指導を構築することである。第四の課題は、教材を開発するとともに、授業を実際に行い、構築した学習指導が有効に機能しうるかどうかを検討することである。 1つ目の成果は、仮定の設定に関する能力を包含する数学的モデル化能力を同定したことである。2つ目の成果は、「現実の世界」と「数学の世界」を結びつける際の見方の1つである「みなす」見方に焦点をあて、「みなす」見方を拡げるための教材とその系列について明確にしたことである。3つ目の成果は、数学的活動における数学的モデル化過程と数学的問題解決過程がどのように関わり合いながら、解決が進展していくのかについて明確にしたことである。4つ目の成果は、構築した学習指導が有効に働くことが見出されたことである。
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