研究実績の概要 |
本年度は、前年度に開発した木材の炭素排出削減効果モデルにおいて、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment: LCA)手法を用いて地球温暖化以外の複数の環境影響削減効果を評価する機能を新たに構築した。考慮した環境影響領域は、光化学オキシダント、資源消費、酸性化、廃棄物、オゾン層破壊、富栄養化、生態毒性(大気)、生態毒性(水圏)、生態毒性(陸域)、土地利用、都市域大気汚染、室内空気汚染、人間毒性(大気)、人間毒性(水圏)、人間毒性(陸域)、騒音とした。 この新モデルを日本の各地域に適用し、2050年までの将来予測を行った。将来シナリオは、国内丸太生産、木材製品利用、エネルギー利用の観点から設定することとし、林業、木材産業、建築・土木・家具産業、木質バイオマスエネルギー産業に関わる専門家・有識者への聞き取り調査を行った。これに基づいて、国内丸太生産は、現状維持、緩伐採増加、政府目標の3つのシナリオ、木材製品利用とエネルギー利用は、現状維持、緩利用推進、積極的利用推進の3つのシナリオを想定した。 これらの将来シナリオに沿って日本の各地域における木材の炭素排出削減効果(炭素貯蔵、材料代替、エネルギー代替)およびその他の環境影響削減効果を2050年まで推計し、総合効果を明らかにした。 さらに、森林および木材の炭素収支に関する先進的な研究を行っているオーストリアの研究機関(Institute of Social Ecology, University of Natural Resources and Life Sciences, Vienna)の研究者と国際共同研究を行い、世界各国における木材の炭素貯蔵効果の歴史的変遷と将来予測に関する検討を進めた。 これらの日本および世界各国に関する研究成果をまとめ、学術論文発表、学会発表等により研究成果を社会に発信した。
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