本研究によって,音楽科教師は,自身の身体感覚を顧みつつ,ジェスチャー,姿勢,視線,表情などさまざまな情報を組み合わせ,子どもとの相互作用の中で,マルチモーダルな教室談話を柔軟に運用していることが明らかとなった。このような音楽科におけるコミュニケーションは,教師-子ども間だけでなく,子ども同士においても成立している可能性が大いに示唆される。教室談話におけるマルチモダリティへの着目は,音楽科における授業研究方法としてのひとつの方向性を示すものであり,今後,子どもの音楽の学びをより精緻にとらえるために重要な視点であると言えるだろう。
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