研究課題/領域番号 |
16K21030
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩橋 崇 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (30402423)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気化学 / 電極界面 / 電池 / イオン液体 / SFG / 和周波振動分光 / in situ計測 / Liイオン電池 |
研究実績の概要 |
電極/電解液界面は電気化学反応場を構築する重要なナノ領域であり、当該界面のイオン吸着・脱離・反応挙動が系の電気化学特性を支配する。しかし、in situ計測技術の制約から実際の電池の充放電時における電極/電解液界面の微視的役割の理解は不十分であった。本研究は表面敏感な振動分光である赤外-可視和周波発生振動分光(SFG)にて、電極/電解液界面構造の新規in situ計測手法を確立し、電池の充放電時における電極/電解液界面の微視的挙動の解明を図る。29年度は当初の計画通り「(1)通常の金属電極/電解液界面のin situ電気化学SFG測定技術の確立」を行った。また、併せて「(2)電解液/電極界面のイオン吸着・脱離挙動におけるLi塩添加効果の電解液中イオン種依存性の評価」も行い、以下のような成果を得た。 (1) 白金蒸着膜を電極とした電極/電解液界面のin situ電気化学SFG測定を実現した。 (2) in situ電気化学SFG計測からLi塩添加時の電解液/電極界面におけるイオン吸着・脱離挙動のイオン種依存性が系の電気化学安定性に寄与することを明らかとした。 上記(1)の成果では白金蒸着膜に電極利用が可能であることを明らかとしたが、蒸着条件の制御が難しく、安定的な電極成膜を可能とするには条件最適化を進める必要がある。また、上記(2)から電解液/電極界面でのイオン吸着・脱離挙動におけるLi塩添加効果が電解液中のイオン種に依存して変化することを明らかとした。これはLiイオン電池の電極表面における相間固体電解質(SEI)の形成過程にも電解液中のイオン種が強く影響を与えることを示唆しており、重要な知見が得られたと考えている。なお、上記(2)の成果については学会で発表済であり、現在学術論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前項「研究業績の概要」にて述べたとおり、当初の計画に従い「通常の金属電極/電解液界面のin situ電気化学SFG測定技術の確立」を実施した。白金蒸着膜によるin situ電気化学SFG測定が可能であることが確認できており、研究は概ね順調に進んでいると考えられる。なお、白金は蒸着時にタングステン電熱線との合金化が進むため、成膜条件の制御が難しいことが判明しており、安定的な白金電極成膜技術の確立には実験条件の最適化を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
前項「現在までの進捗状況」にて述べたとおり、29年度以降に予定されている研究項目の一つである「通常の金属電極/電解液界面のin situ電気化学SFG測定技術の確立」は概ね完了した。そこで、30年度は29年度以降に予定されている「(1) 実用電極/電解液界面へのin situ電気化学SFG測定技術の展開」及び「(2) Liイオン電池構造を模した系のin situ SFG測定によるSEIの微視的役割の解明」の実施を行う。まず研究項目(1)の達成のため、スピン塗布により白金蒸着電極表面上に成膜したグラファイト含有高分子膜を分光計測用カーボン電極として利用することを検討する。これをin situ電気化学SFG測定セルに組み込み、通常の電解液/カーボン電極界面におけるイオン吸着・脱離挙動が既報の系にてSFG計測を行うことで、上述カーボン電極がSFG分光計測に利用可能か否かの検証を行う。研究項目(1)達成後に上述カーボン電極と市販のリチウム電極を組み合わせることでLiイオン電池の系を模したin situ電気化学SFG測定セルを作成し、SEI有無における負極のイオン吸着・脱離・反応挙動の印可電位依存性の評価を行う予定である。
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