平成30年度に行った潤滑グリースを塗布した状態での摩擦特性や減衰比の評価実験や関連する数値計算において,実験のばらつきや再現性が問題となることがしばしばあった.これは,グリースが有するチキソトロピー性や成分・特性のばらつきに起因すると考えられる.精緻かつ普遍的な研究成果を公表するためには,再現性を評価する追実験が必要と考えている.令和1年度(平成31年度)は,潤滑剤の特性の時間依存性やばらつきに起因すると考えられる誤差について,より詳細に検討を行った. 潤滑剤の温度依存性やチキソトロピー性が動特性に及ぼす影響を除外するため,恒温状態で,十分に慣らし運転(グリースの繰り返しせん断)を行った後に,振動試験を行い,そのばらつきが小さくなることを確認した. 前年度までに得られた結果と同様の結果が誤差を抑制しながら得られたことから,数学モデルの高精度化を図ることができた. 定性的な傾向は,実験と理論で良く一致することが確認できたが,定量的には動特性に20%程度の誤差が生じた.これは,組立誤差や結合部特性のモデル化が不十分であることや,弾性接触部で生じる剛性・減衰の非線形性を十分にモデル化できていないことに起因すると考えられる.定量的な予測を実現するためには,より詳細な接触部の現象解明が不可欠である.これについては,本課題の研究期間が終了した後も,十分に検討していく予定である. また,有限要素解析を行う上で,その計算コストが問題となる.解析モデルの自由度を低減し,大規模機械システムの解析にも応用可能なようにモデル修正を行うことも今後の課題である.
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