研究課題/領域番号 |
16K21037
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
松田 寛子 東京海洋大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (80709733)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ナイアシン / トリプトファン / 老化 / インスリンシグナル / mTORシグナル / SIRT1 / ACMSD |
研究実績の概要 |
補酵素として我々の生命維持に貢献するナイアシンは、生体内でニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)に変換され、長寿遺伝子SIRT1の活性化を介して老化や癌などの老年疾患の予防効果をもつ。申請者はNAD生合成量を減少させるトリプトファンーナイアシン(Trp-NAD)代謝の主要酵素、ACMS脱炭酸酵素(ACMSD)活性が、フィトケミカルなどの食品成分や老化に関わるmTORシグナルの因子により抑制される可能性を発見した。そこで本研究では、mTORシグナルやSIRT1を介したTrp-NAD代謝による新たな老化調節機構の解明を目的とした。 ICR雄マウスから、コラゲナーゼ灌流法を用いて初代肝実質細胞を単離後、インスリン(INS)・デキサメタゾン(dex)などを添加し24時間培養した。その後、ACMSDのタンパク質とINSシグナルの亢進と関連の深いAKTのリン酸化タンパク質(pAKT)の発現を検討した。既往の研究において、Ⅰ型糖尿病モデルラットでは肝中ACMSD活性が高く、INSを投与することでその活性が抑制されることが報告されている。しかし、肝実質細胞を用いた本検討では、INS添加において、INSシグナルが亢進しているにも拘らず(pAKT発現が上昇した)ACMSDタンパク質発現に変化はなかった。この結果から、INSはin vivoにおいて間接的に肝臓のACMSD活性を制御している可能性が考えられた。一方、dex添加では、ラットを用いた既往の報告と一致しACMSDタンパク質発現の上昇が確認され、mTORシグナルとACMSD発現との関連性が確認された。 ショウジョウバエにおいて、Trp-NAD代謝の存在を質量分析計を用い代謝産物を検出することで検討したところ、代謝経路として3-ヒドロキシアントラニル酸より上流は存在し、下流は存在しないことが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)あらゆる実験系の立ち上げに時間がかかってしまった。 2)予定していた人数よりも少ない人数での遂行になってしまった。 以上の理由より、進捗状況ややや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
INSはin vitroにおいて、直接的にACMSD発現に影響を与えない可能性が示唆された。既往の研究では、in vivoでACMSD活性変動に影響を与えたと報告されているホルモンや食品成分などが多く、実際に細胞に直接作用しているかを検討しているケースは少ない。そのため、引き続きこれまでにACMSD活性変動に影響を与えるホルモンや食品成分に着目し、細胞に直接または動物生体内を介して作用するかを明確する必要がある。実際に、dexはin vitroでもACMSDタンパク質発現を誘導しており、in vivoの結果と一致している。 ショウジョウバエにおいては、Trp-NAD代謝経路の確立を引き続き目標として、代謝経路の主要酵素を遺伝子導入したハエのフェノタイプを解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入したい消耗品があったが、使用期限が短く、実験の進捗状況的に年度内での購入が困難となってしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
引き続き予定している消耗品の購入にあてる予定である。
|