研究課題/領域番号 |
16K21038
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安部 浩次 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (40582523)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リーダーシップの経済学 / 情報の経済学 / 不完備情報ゲーム / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
本研究は、リーダーシップの経済学の分野においてシグナリング・メカニズムにより説明される複数のリーダーシップ手法を考察し、それぞれの手法がどのように機能するか・しないかをゲーム理論およびゲーム実験を用いて研究することを目的としている。具体的には手本によるリーダーシップ、犠牲によるリーダーシップ、言葉によるリーダーシップの三つのリーダーシップ手法を考察対象としている。
今年度は、文献によるサーベイ研究を実施することに加え、次の二つのことを並行的に研究するという計画であった。一つは、伝統的な利得環境を想定した上で、簡単なチーム生産モデルを用いて、異なる種類のリーダーシップがいかなる利得構造の下で機能するかを理論的・実験的に考察することである。もう一つは、近年の行動経済学の成果に照らして、リーダーシップに関連する心理的要因の特定化とその要因がどのようにリーダーシップを生じさせるかについて考察することである。
今年度は、計画どおり文献によるサーベイ研究を実施したことに加え、二つ目の計画にある行動経済学的リーダーシップの研究に一定の成果を得た。この成果は、他者との利得の差を不公平と感じる心理的要因がリーダーシップを生じさせるメカニズムを明らかにしたものである。特に、従来の成果と比べて新しい点は、このような心理的要因に注目すると、リーダーシップをとりやすい個人特性(不公平をどのように利得に還元するかについてのパラメータ)が存在するが、その特性を多くの人は持たないこと、普通の人がリーダーシップをとるかどうかは直面する問題の利得構造に強く依存すること、そして、多くの普通の人に注目した場合に利得構造に依存してどのような特性を持った個人がリーダーシップをとるかを明らかにしたことである。この成果は、国際会議で報告され、現在査読誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)古典的な利得環境のもとで3つのリーダーシップ手法(手本によるリーダーシップ、犠牲によるリーダーシップ、言葉によるリーダーシップ)がうまく機能する・しない利得構造を理論的に考察することはできているが、その成果を利用してうまい実験を設計することができなかった。
2)行動経済学的リーダーシップの研究に関しては、不公平感が生じさせるリーダーシップのメカニズム解明に一定の成果があったものの、当初予定していた言葉によるリーダーシップの行動経済学的研究にはあまり時間をかけることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)リーダーシップの実験研究については早急に実験設計を行った上で実験を実施する必要がある。現在、他の研究者に実験設計について相談をしているので、そこでの議論をもとに早急に実験設計を行い、その研究者がいる大学の実験センターで実験を実施する予定である。
2)行動経済学的リーダーシップの研究に関しては、当初予定していた言葉によるリーダーシップの行動経済学的理論研究を粘り強く行う。
3)昨年度に行った不公平感が生じさせるリーダーシップ研究の成果を鑑みて、犠牲によるリーダーシップの性能を行動経済学的に再考することは重要であると思い至った。この理論研究を(2)と並行的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初予定していた実験を行うことができなかったため。
(使用計画)実験室実験の謝金などの実験実施のために使う。またプリンターが故障したためその購入に使う。
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