研究実績の概要 |
本研究の目的は,Barrett食道癌の発生母組織を推定することである.従来,Barrett食道癌は腸上皮化生粘膜を母組織として発生すると考えられてきたが,噴門腺型粘膜がBarrett食道癌の発生母組織となるかは明らかでない. 表在Barrett食道癌49例に対して免疫染色(CDX2, CD10, MUC2, MUC5AC, MUC6)を施行し,腫瘍隣接粘膜の質および腫瘍自体の形質を検討した.腫瘍径と腸上皮化生粘膜の隣接頻度は相関せず,Barrett食道の広がりと相関した.小型腫瘍(径10 mm以下)の約7割は噴門腺型粘膜のみと接していた.微小腫瘍(径5 mm以下)の約半数は胃型腫瘍で,それ以上の径の腫瘍に比して有意に胃型腫瘍の頻度が高かった.また胃型腫瘍細胞および小型腫瘍隣接噴門腺粘膜にはCDX2が発現していた.以上の結果より,Barrett食道における腸上皮化生は前癌状態ではなく副現象(epiphenomenon)であること,およびCDX2陽性の噴門腺型粘膜が発生母組織である可能性が改めて示唆された.蛍光免疫染色による評価項目(gamma-H2AX, 53BP1)はバーチャルスライドによる取り込み後に行う予定であったが,バーチャルスライド機器の取り込み条件設定中で,結果はまだ出ていない.
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