研究実績の概要 |
呼吸不全リスク指数による術前スクリーニングと、それに基づくハイリスク例に対する術前呼吸リハビリテーション介入による、消化器手術の術後呼吸器合併症(PPC)の予防効果を検証するため、プロスペクティブにPPC発生の有無等を評価した。 2016年7月から2019年3月までに消化器手術のため入院した706例を介入群として集計し、2009年7月から2012年3月までの期間に消化器手術を施行したコントロール群683名と比較した。患者背景は両群で差がなかったが、介入群で術前呼吸リハビリテーション施行例が有意に増加していた(1.5%→10.8%, p<0.001)。患者全体でのPPC発生頻度に有意な変化はみられなかったものの(4.7%→4.1%, p=0.600)、術前呼吸リハ未施行の患者をみると介入群でPPC発生は有意に頻度が低下していた(4.6%→2.4%, p=0.035)。 また、介入群の中で術前呼吸リハを実施した患者73例を解析すると、PPCが発生した14例では胸部手術(19.4% vs 78.6%,p<0.001)および開胸/胸腔鏡操作(17.8% vs 71.4%, p<0.001)が多く、PPC以外の術後合併症として縫合不全や反回神経麻痺が有意に多くみられた。 以上より、術前スクリーニングの取り組みによって積極的な周術期介入が促され、効率的にハイリスク例に対して呼吸リハビリテーションが施行されていると考えられた。一方で、プライマリアウトカムであるPPC発生減少は達成することができなかった。サブグループ解析では胸部手術の侵襲性の高さや術後の嚥下機能障害に伴う誤嚥がその原因であることが示唆された。 今後、食道癌手術に代表される胸部手術をターゲットに、口腔ケア等のより集学的なアプローチを行ってPPC減少を目指したい。
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