実行機能とは、取り組むべき目標の要請に応じて自己の認知を制御して適切に行動するための脳機能であり、目標に関連しない情報を「抑制」できることが発達的に重要である。そこで本研究では、知的障害児・者の「抑制」特性を解明するために、①「抑制」が必要な状況を明らかにすること、②「抑制」のメカニズムを明らかにすること、③「抑制」と適応行動との関連を明らかにすることを目的としている。 3年目の平成30年度は、知的障害児・者の「抑制」と適応行動や不適応行動との関連について検討を行った。抑制を評価するために、Animal Size Testと呼ばれる干渉課題を用いた。この課題では、実際には人間より大きい動物(例えばゾウ)が課題上では小さい絵で示され、実際には小さい動物(例えばトリ)が大きい絵で示され、その絵の大きさを回答することが求められる。その際、実物の大きさから干渉を受け、反応時間の遅延や誤反応の増加が見られる。そうした遅延や増加を最小限に抑えられるほど抑制能力が高いとみなすことができる。干渉効果の大きさと適応行動尺度及び不適応行動尺度との関連について分析を行った。 平成28年度では干渉が刺激の反応段階のみならず入力段階においても生じることが示されたが、平成29年度では入力段階における干渉の大きさと注意欠陥多動性障害特性の強さとが関連することが示唆された。さらに、平成30年度では入力段階における干渉の大きさと不適応行動との関連が示唆された。
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