研究課題
平成28年度は拡散テンソル画像を用いたROI法によるブローカ野と関連する神経繊維束解析の予備的段階として、1歳から22歳の健常者81名分(男性40名、女性41名)の構造画像(T1強調画像)を用いて、ブローカ野の灰白質体積の測定を行なった。体積測定はテンソル画像を測定するのと同様にマニュアルトレーシングで行なった。ブローカ野の測定にあたっては、脳溝をランドマークとしてブローカ野を弁蓋部(ブロードマン44野)と三角部(ブロードマン45野)に分割した。また測定の信頼性を担保するために、2名の評価者でランダムに選択した10例のサンプルの測定値の一致度を検討し、測定の正確性を担保した。月齢によるブローカ野の灰白質体積の推移を検討した結果、灰白質体積は左側が10.7歳、右側が10.6歳でピークを迎えた後、緩やかに減少していくことがわかった。前頭葉全体と比較して、ブローカ野では灰白質の体積がピークを迎える月齢が、前頭葉全体と比較して、やや遅いことが示された。また、通常脳全体、あるいは前頭葉全体では右側の灰白質体積の優位性が認められるが、ブローカ野では認められなかった。このプローカ野灰白質の左右対称性は灰白質体積のピーク前後で変わらず、発達過程においてブローカ野の左右対称性が維持されることが示唆された。これらの結果から、ブローカ野では特異的な側性のパターンがあり、この側性のパターンは言語処理の左側優位性と関連する可能性があることが示唆された。また、発達過程における灰白質体積の男女差を比較した結果、発達過程において一貫して有意な体積の男女差は認められなかった。このことからも、前頭葉の他部位とは異なるブローカ野の構造的な特異性があることが示唆された。
3: やや遅れている
これまでに拡散テンソル画像のROI法による解析のための、構造画像の予備的な解析が終了した。しかしながら、同様の方法でテンソル画像を解析しようとしたものの、うまく解析することができなかったことから、他の方法を用いて解析する必要がでてきている。現在は、解析方法についていくつかの候補を挙げ、最適な解析方法について検討している。そのため、当初の研究計画よりやや進捗が遅れているといえる。
今後は、現在所持しているテンソル画像の最適な解析方法を探すことがまず第一の目標となる。いくつかの有力な解析方法の候補があるため、それぞれの方法を試しながら最適な方法を選択する予定である。その後に、テンソル画像の解析によって得られた値の年齢的推移を検討するとともに、既に測定が終了している灰白質体積との関連を検討する。
論文の作成が遅れており、英文校正費用として計上した予算が消化できなかった。
次年度において、文献複写料および論文の英文校正費用として使用する予定である。
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Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging
巻: 2 ページ: 196,204
10.1016/j.bpsc.2016.11.006
Asian Journal of Psychiatry
巻: 25 ページ: 197,202
10.1016/j.ajp.2016.10.031