研究課題/領域番号 |
16K21052
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
岡崎 琢也 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 研究員 (60772556)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光ファイバーセンサー / 全反射減衰法 / HPLC / エバネッセント波 |
研究実績の概要 |
本研究では,多成分分析を可能とする光ファイバー液体クロマトグラフィックセンサーの開発を目的としている。これは光ファイバーセンサーの可搬性,感度,必要試料量の少なさ,時間分解能の高さを活用しており,可搬性の高い測定システムによる多成分分析を可能としている。また,汎用性の高さから幅広い化学種の選択的検出に適用できる。 まず,光ファイバーセンサーの応答特性を解析するために,色素を中心とした分析対象を含む溶液にセンサーを暴露して応答を得るバッチ試験を行った。ジャケットを除去したシングルモードファイバーをセンサー部とするヘテロコア方式を用い,エバネッセント波の吸収を分光検出器で検出した。 種々の色素を測定した結果,明瞭な吸収スペクトルが可視光領域だけでなく200 nm~300 nmの紫外領域でも得られた。300 nm以下の透過が得がたい一般的なマルチモード光ファイバーに対して,ヘテロコアを利用したこのセンサーは紫外吸収を持つ多くの物質に適用可能だった。次に,分析対象の電荷によって検出感度に大きく差が出ることがわかった。ファイバー表面は石英によるシラノール基であるため,正の電荷を持つ色素に対して高い感度を示す一方,中性または負電荷の物質はほとんど応答しなかった。そこで,ファイバー表面を疎水性にし,負電荷の分析物に対しCTABを添加してイオン会合体とすることで疎水性相互作用を利用した高感度化に成功した。一例として,10 nMのウラニンを検出可能だった。一方,アントラセンなどの中性分子は検出が可能であったが0.1 mM程度と感度に課題を残した。 このセンサーを使用して内径200 μmのPEEKチューブから構成されるフローセルを作成し,HPLCのUV検出器の下流に接続した。カラムを接続せずに溶離液を流し,前述の分析物を導入した結果,それぞれの検出器で分析物に対する良好な応答が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロマトグラフによって分離された多成分の検出を目的とした光ファイバーセンサーによる検出系の最適化として,1)紫外~可視の幅広い波長領域の使用,2)高感度化,3)電荷の異なる分析物の検出を達成した。また,HPLCの測定系に組み込み検出器としての有用性を評価できた。特定構造の分子への測定感度など,いくつか課題を残すものの,実施計画に応じた成果が概ね得られたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず,引き続き検出系の最適化として現在解決すべき課題1)中性分子への感度の低さ,2)分析物が高感度な場合に発生するテーリングの解決に取り組む。検討項目として,ファイバー表面の疎水性や加える対イオンの種類、溶離液の極性の最適化等によって改善できると考えられる。また,実施計画に沿い,作製したモノリスシリカカラムとの一元化したセンサーを作製する。このセンサーの有用性を評価した後に,公定法などの適用や分離濃縮法などの組み合わせといった応用を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は最終年度ではないため、特別に調整はしなかったことから差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
比較的少額であるため、試薬や消耗品の購入に充てる予定である。
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