研究課題
本研究はIFNλ4の機能的役割を解明すること及び新規肝細胞癌療法の可能性について検討することを目的とする。申請者はIFNα, IFNλ3, IFNλ4の恒常的発現細胞株を作成した。これらの細胞株にHCVを感染させたところ、HCVの複製は完全に抑制された。しかしながら、これら細胞株に種々の抗がん剤を処置した結果、IFNλ4と抗がん剤の併用が最も強い抗腫瘍効果を示すことを見出した。興味深いことに、IFNλ4レセプターをsiRNAを用いてノックダウンしたところ、IFNシグナルは完全に抑制されるにもかかわらず、抗がん剤の増強効果は維持されたままであった。この結果はIFNλ4はIFNλ4レセプター以外の未知のレセプターを介して、抗がん作用を呈することを示唆する。また、本年度はCrispr-cas9システムを用いて、IFNAR1, IFNAR2, IL28RA, IL10RBそれぞれのノックアウト細胞株を作成した。これらの細胞株を用いて未知のレセプターの同定を試みている。本年度はIFNλ4のリコンビナントタンパク質を動物由来細胞から作成することを試みた。その結果、動物由来細胞からIFNλ4を高発現出来る最良の条件を同定することが出来た。培養細胞を用いた研究には十分使用できるリコンビナントタンパク質の作成に成功している。今後はIFNλ4の大量精製方法の検討、精製効率を上げる方法の検討が必要となる。申請者はIFNλ4を特異的に定量できるリアルタイムPCR用のプライマー、プローブセットを作成した。これらプライマー、プローブを用いて血清中のIFNλ4を定量出来るか検討した結果、血清中のIFNλ4を定量することは出来なかった。よって次年度は、IFNλ4のELISA系もしくは全く新しいシステムを用いた測定系を開発する。
2: おおむね順調に進展している
IFNλ4のリコンビナントタンパク質を効率よく作成できる条件を見出せたこと、種々のノックアウト細胞株、恒常的遺伝子発現細胞株、抗がん剤耐性細胞株を作成できたこと等、本研究の目的を果たす為に必要な実験材料を揃えることが出来た。リコンビナントタンパク質の作成はIFNλ4の特異的抗体の作成やELISA、新規IFNλ4検出系の開発に応用できると期待される。IFNλ4と抗がん剤併用による抗腫瘍増強効果はIFNレセプター以外のレセプターを介していることを見出せた。更に、IFNレセプターノックアウト細胞も作成できたことから、IFNλ4の未知のレセプター及びシグナル伝達経路の解明に向けた研究を進めることができる。
今後は以下の点について研究を進行する。(1) 各種IFNリコンビナントタンパク質をヒト初代肝細胞やIFNレセプターノックアウト細胞に処置しDNAマイクロアレイを行い、IFNλ4で特異的発現誘導及び発現抑制遺伝子を同定する。更に、パスウェイ解析から、IFNλ4特異的シグナル伝達経路を同定する。(2) shRNAライブラリーやcDNAライブラリーを用いて、IFNλ4選択的に表現系が得られるクローン細胞を作成する。そのクローンの中から候補となるレセプターを選定する。候補となったレセプターの遺伝子をクローニングし、レセプター過剰発現細胞を作成、または、CRISPR-Cas9システムを用いたレセプターノックアウト細胞を作成し、その表現系を解析することでIFNλ4のレセプターを同定する。(3) IFNλ4の測定系の開発に向けた研究を行う。
本年度の研究計画が予定よりも順調に進めたこと。本年度に作成出来た実験材料を用いて、次年度は主にデータを出す実験が中心となるため次年度は本年度よりも予算が必要になると判断したため。
消耗品としては、蛋白質や遺伝子解析用試薬、レポーターアッセイ用試薬、細胞培養器具、抗体、形質導入試薬、その他の試薬類が必要である。本研究の計画や遂行の妥当性を確認し、より優れた成果をあげるため、国内学会・国際学会に参加し最新の知識を入手するための旅費を計上している。
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