研究課題
本研究では、自閉スペクトラム症(ASD)児を対象に、語用的推論を必要とする発話の表出あるいは理解の場面における、プロソディの運用について検討を行う。字義通りには発話者の意図が伝達されない語用解釈の場面において、意図理解の手がかりとなるプロソディが使用されるか、また児童が他者への伝達のためプロソディを調節するかを検討する。音声コミュニケーションに特化した発話解釈の困難さについて、その特徴を整理する当該年度は、自閉スペクトラム症の診断を持つ児童および定型発達児を対象に、以下のような心理実験を行った。2群は、生活年齢、語彙年齢、非言語推論能力によって統制された。課題では、音声付アニメーションによるストーリーを呈示し、参加者に回答を求めた。話者AによるYes-No質問(例:「その本面白かった?」)に対し話者Bが間接応答を行った。実験条件として、回答発話から文脈的に暗意を導出できる条件(例:「読むのをやめられなかったよ」→Yes、「すぐに読むのをやめたよ」→No)、曖昧性が高くプロソディに依存する条件(例:「妖怪がいっぱい出てきたの」→Yes/No)を設定した。会話呈示後、参加者には、(a)話者Bの意図の選択、(b)選択の理由、(c)発話者の顔表情の選択(ポジティブ表情/ネガティブ表情)を求めた。検証の結果、条件ごとに群間で異なる傾向が見られ、これらの研究結果は国内外の学術集会で発表済みおよび発表予定である。
2: おおむね順調に進展している
申請者の所属先が変わったため、研究環境の整備に時間を要した。しかしながら従来からのフィールドにおいてデータ収集は予定通り行われたため、おおむね順調に進展している。
28年度の追試を行う。具体的にはより文脈依存性の高い手がかりを用いた語用推論を検証していく。また所属先でのフィールド開拓および実験環境の整備を進めていくことが急務である。
申請者の所属先が変わったため、研究環境の整備に時間を要し、当初計画していた謝金等の支出がおこなわれなかった。
次年度に行われるデータ収集に必要な物品(視線追跡装置)の購入およびデータ分析のための謝金に充てる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Clinical Linguistics & Phonetics
巻: 31(3) ページ: 234-249
10.1080/02699206.2016.1238509
Lingua
巻: 1675-176, ページ: 83-96
10.1016/j.lingua.2015.10.007