研究課題/領域番号 |
16K21059
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三浦 優生 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 講師 (40612320)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロソディ / 自閉スペクトラム / 語用論 |
研究実績の概要 |
本研究では、自閉スペクトラム症(ASD)児を対象に、語用的推論を必要とする発話の表出あるいは理解の場面における、プロソディの運用について検証する。行動実験および質問紙調査から、音声コミュニケーションに特化した発話解釈の困難さについて、その特徴を整理する。 今年度は、昨年度に実施した研究課題の追試として、ASD児におけるプロソディに基づく間接発話の理解を引き続き検証した。ASDの診断をもつ児童および定型発達時を対象に次のような行動実験を実施した。 課題では、音声付スライドによるストーリーを呈示し、実験者の質問に対する児童の回答を記録した。各ストーリーでは、登場する話者Aによる極性質問に対し、話者Bが間接発話で回答する場面で結ばれる。その折に、(A)先行する文脈や(B)発話のプロソディを解釈の手がかりとして用いれば、話し手の意図を導き出すことができる。今回の追試では2つの手がかりが導く回答が一致する条件、不一致の条件を設定した。その結果、一致条件ではチャンスレベルを上回る正答率を示し、不一致条件では手がかりのいずれも優先的な使用をしていない、チャンスレベルの選択傾向が、両群において得られた。 またASD児のプロソディ表出に関する質問紙を保護者に実施し、日常場面における声色の調節について、その特徴を検証した。因子分析の結果、声の自然さ、他者配慮、声真似、発話態度に関わる4因子が抽出され、高い信頼性が得られた。声まねを除く3つの下位尺度において、群間の得点差が見られた。また判別分析から、本質問紙による2群の判別が高い的中率で行われることが明らかになった。 これらの研究結果は国内外の学術集会で発表済みあるいは投稿準備中である。またASD児における感情プロソディ理解についてのまとめた概説が書籍に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来のフィールドにおいてデータ収集は予定通り行われた。ASD児、定型発達児ともに70ケースの実験データが集められた。質問紙データは103ケースが収集され、結果は現在投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
語用推論をともなう発話場面について、尺度含意、アドホック概念などの別の言語表現を検証する。また発話の表出スキルについても実験的に検証していく。またアイトラッカーを用いて、発話音声のオンライン処理の過程を明らかにしていく。 表出面の調査に関しては、さらに幼少の子ども(3-6歳)のデータを収集し、発達的な変化について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンピュータの購入を検討していたが、現行のマシンで実験が可能となったため、購入を見送った。次年度の物品およびデータ分析の謝金に使用する。
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