研究課題/領域番号 |
16K21066
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉長 恒明 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (30770226)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アミロイドーシス |
研究実績の概要 |
fibrinogenAα鎖遺伝子の4899_4902delAGTG変異が導入されたヒト型fibrinogenを産生するChinese Hamster Ovary(CHO)細胞の検体を用いて解析を行った。細胞培養の途中で採取される培養上清(細胞外成分)とCHO細胞自体を破壊して採取される細胞破砕液(細胞内成分)を解析したところ、fibrinogenが産生されていることを確認した(ELISA法)。次にCHO細胞の上清と細胞破砕液に対してSDS-PAGEを行い、抗Aα抗体や抗fibrinogen抗体を用いてウェスタンブロットを行い、ともに正常Aα鎖より短いAα鎖とその分解産物(Bβと同じ移動度)が形成されていることを確認した。 次にCHO細胞の上清と細胞破砕液を再度SDS-PAGEし、CBB染色を行い、数か所の陽性バンド部位に対して質量分析による解析(LC-MS/MS)を行った。結果は陽性バンド部位からは正常Aα鎖部位(20-475)は検出されたが、異常Aα鎖部位(523から先)は検出されなかった。また細胞破砕液においてはSDS-PAGEし、通常のCBB染色と免疫沈降法(抗フィブリノーゲン抗体)を用いた感度の高い方法で実験を行ったが、数か所の陽性バンド部位からはAα鎖自体が検出されないという結果であった。論理上は異常Aα鎖は検出可能なはずであるため、H29年度は質量分析による解析の精度を高め、異常Aα鎖の位置を同定し、実験計画をすすめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
変異バンド位置を切り出したが、質量分析による解析では変異fibrinogenのC末端側の変異部位の検出にいたっておらず、培養上清と細胞内でのfibrinogenの生成、細胞外移送における細かい病態機序の同定に至っていないため、やや遅れていると判断した。本変異を有する患者血漿からは異常fibrinogenが検出できなかったことから異常Aα鎖をもつフィブリノーゲンは早期の段階で生体内のプロテアーゼで分解されており、その断片が一部アミロイド構造にいたって腎臓などに沈着すると想定している。
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今後の研究の推進方策 |
CHO細胞が産生する異常Aα鎖の位置を同定することをまず一つの目標とする。抗fibrinogen抗体と抗Aα鎖抗体を用いて上清と細胞破砕液を用い、プロテインAセファロースなどを用いて免疫沈降法の感度をさらに上げる。また電気泳動をおこなった場合と電気泳動せず、免疫沈降法で作成した免疫複合体の液体を処理し、質量分析にかけるなどして変異部位のペプチドの検出が行えるように複数の方法を検討する。同定した後はその異常フィブリノーゲンを精製し、さまざまなプロテアーゼの分解酵素を入れ、どのプロテアーゼが断片化を引き起こすのかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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