本研究は、ホウ酸‐ポリオール縮合物から特徴的な酸化ホウ素(B2O3)‐炭素構造体の形成およびこれを活性前駆体とした炭化ホウ素(B4C)粉末の低温合成に成功した研究代表者の実績を踏まえ、ホウ酸‐ポリオール縮合物を繊維化することでB4C合成における形態機能性の発現を目指す。平成29年度は、ホウ酸‐ポリオール縮合物繊維から得られるB2O3‐炭素構造体(B4C前駆体)繊維を用いたB4Cの合成およびその形態について調査した。 B2O3‐炭素構造体繊維は、電界紡糸(エレクトロスピニング)により得られたホウ酸‐ポリビニルアルコール(PVA)縮合物繊維を大気中で熱分解することで作製した。溶液組成、電界紡糸条件および大気中熱分解条件を調整することで、ホウ酸‐PVA縮合物繊維の不織布形態を反映した不織布状のB2O3‐炭素構造体繊維を得ることができた。このB2O3‐炭素構造体繊維を焼成したところ、1150℃の低温からB4Cの生成が確認された。また、SEMを用いてその形態を観察したところ、数μmの微粒子が連結した形態をもつB4Cが観察された。これは繊維化しないホウ酸‐PVA縮合物粉末から得られるB4C粒子とは全く異なる形態であり、前駆体であるB2O3‐炭素構造体の繊維形態を反映していると考えられる。以上のことから、ホウ酸‐ポリオール縮合物を繊維化することで繊維状のB2O3‐炭素構造体が得られ、これを前駆体とすることで連結微粒子からなるB4Cが得られることがわかった。 本研究では、ホウ酸‐ポリオール縮合物を繊維化することでB2O3‐炭素構造体繊維を作製し、特徴的な形態のB4Cを得ることができた。溶液組成、紡糸手法・条件、大気中熱分解条件および焼成条件を最適化することで、本手法によりホウ酸‐ポリオール縮合物繊維から繊維状のB4Cが得られると期待される。
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