研究実績の概要 |
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は慢性進行性の自己免疫性肝疾患の一つである。PBCの発症や病態進展には遺伝因子と環境因子の関与が推定されているが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、PBCの線維化進行と病態進展において、 IL-33/ST2 pathwayが関与しているか否かを明らかにすることが目的である。 まず、今年度は、保存血清を用いて、IL-33とsST2をELISA法で一括測定し、肝組織所見や臨床検査値との関連を検討した。IL-33は進行期で高い傾向(p=0.05)があり、sST2は、非進行期に比べ進行期で有意に高かった(p<0.01)。さらにsST2は線維化マーカーのWFA+-M2BPと正の相関をしていた(r=0.42、 p<0.001)。これらの成果は、第41回日本肝臓学会東部会で報告した(城下 智, 他. 肝臓. 2016, suppl. 3, 23)。 これらの結果を基に、肝におけるIL-33およびsST2の発現の検討を開始した。IL-33は、免疫組織化学所見より、患者の肝の血管内皮および類洞上皮系細胞で陽性であった。sST2は、血球系細胞の一部で陽性であった。現在、IL-33陽性細胞およびsST2陽性細胞の同定を行っている。さらに、PBC線維化進行マウスモデルにおいて、IL-33/ST2の発現についても解析を行っている。 また、PBCの疾患感受性と病態進展に関して、免疫遺伝学的側面からの研究報告のまとめを行い報告した(Joshita S, et al. J Immunol Res. 2017, 2017: 3073504)。また、protein tyrosine phosphatase N22遺伝子多型と疾患感受性との相関についても報告した(Umemura T, Joshita S, et al. Sci Rep. 2016, 6: 29770.)。
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