研究実績の概要 |
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は慢性進行性の自己免疫性肝疾患の一つである。PBCの発症や病態進展には遺伝因子と環境因子の関与が推定されているが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、PBCの線維化進行と病態進展において、 IL-33/ST2 pathwayが関与しているか否かを明らかにすることが目的である。 昨年度は、血清中のIL-33とsST2の肝組織所見や臨床検査値との関連について検討し、PBCの線維化進行と病態進展において、PBC患者の血清中IL-33/sST2は、病態と相関していることを明らかにした。これらの成果は、今年度、Digestive Disease Week 2017で報告した(Joshita S, et al. Gastroenterology, 2017, 152: S1185)。 これらの結果を踏まえ、今年度は、肝組織におけるIL-33の発現の検討を行った。肝組織におけるIL-33の発現について、mRNAの発現はRNA in situハイブリダイゼーション法のRNAscopeで、また、タンパク発現は、IL-33の免疫染色を行い比較検討した。RNAscopeでは、肝の門脈域と類洞でmRNAの発現が確認され、免疫染色所見では、IL-33陽性細胞は、血管内皮細胞であり、門脈域と類洞の陽性細胞数との間に相関が認められたが(r=0.70,P<0.01)、陽性細胞数と病態進展との相関はなかった。 また、PBCの病態進展に関して、肝線維化との関連が示唆されるAutotaxin(ATX)に着目し、PBCの病態進展におけるATXの臨床的意義を検討した。ATXとNakanuma分類の病期は有意な正の相関を示し(r=0.53、p<0.0001)、新規線維化マーカーであるM2BPGi(r=0.54、p<0.0001)やAPRI(r=0.36、p=0.006)との相関を明らかにした(城下 智、 他. 肝臓. 2017, suppl. 2, A548)(Joshita S, et al. Sci Rep, 2018 in press)。 さらに、PBCの疾患感受性と病態進展に関して、免疫遺伝学的側面からの研究報告のまとめを行い報告した(Joshita S, et al. Clin J Gastroenterol. 2018, 11: 11-18)。
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