研究課題/領域番号 |
16K21070
|
研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
池田 裕一 湘南工科大学, 工学部, 講師 (80435396)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 宇宙機 / コントロール・モーメント・ジャイロ / 特異点回避 / 非線形モデル予測制御 / 姿勢制御 |
研究実績の概要 |
近年,地球・天文観測のミッションにおいて,特定領域の複数目標点を短時間で観測する多点指向制御など,宇宙機の姿勢を高速かつ大角度で変更させる必要のあるミッションの需要が高まっている.このようなミッションの実現においては,姿勢制御用アクチュエータとして大トルクを出力することができるコントロール・モーメントジャイロ(CMG)の使用が適切であると考えられるが,CMGにはある回転軸方向にトルクが発生できない「特異点」と呼ばれるジンバル角の組が存在するため,特異点回避を考慮した制御手法の構築が必須である.本研究では,CMG を用いた宇宙機の高速かつ大角度姿勢変更に対して,CMG の特異点回避を考慮した姿勢制御手法の構築,および実証実験による制御手法の実装可能性についての検証が目的である.今年度は,以下の研究課題について取り組んだ. (1)申請者らが以前に提案した非線形モデル予測制御(NMPC)に基づいた制御手法では,指令トルクをNMPCにより算出していたが,制御系の安定性は保証されておらず,制御性能については評価関数の重みで調整するしかなかった.一方,アクチュエータの特性を考慮しない(アクチュエータが指令トルクを正確に生成できる)場合に対しては,制御系の安定性を保証した制御手法が数多く提案されている.そこで,アクチュエータの特性を考慮しない場合の制御則とNMPCを組み合わせる事により,CMGの特異点回避を考慮し,かつ制御系の安定性や制御性能調整が容易な制御手法を構築し,数値シミュレーションにより有効性を確認した. (2)実験装置に必要となる計算機,モータ,センサなどの機械・電子部品の選定と購入,および実験装置の設計を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
制御手法の構築については概ね計画通りに進捗しているが,特異点回避項を含む評価関数の設定や安定性を保証するために用いる制御則の検討に想定以上に時間がかかったため,もう1つの検討事項である,制御系設計を考慮したCMGを搭載した宇宙機のモデリングについては検討が遅れている.実験装置に必要になる機械・電子部品の選定・購入や装置設計については計画通りに進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,進捗が遅れている制御系設計を考慮したCMGを搭載した宇宙機のモデリングを早急に推し進め,今回構築した制御手法を適用しモデルについての評価を行う.次に,選定・購入した機械・電子部品を用いて実験装置を製作し,構築した制御手法を実際の宇宙機へ搭載するために必要なコントローラーの性能,および制御則の実装可能性についても検討する.さらに,実証実験を実施することにより,数式モデルによる理想環境下での成果に加えて,ノイズや製作過程で生じる物理パラメータ誤差,CMGの配置誤差にも対応可能な制御手法の構築を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の製作に必要な機械・電子部品の金額見積や発注時期が年度末になり,購入時期が次年度になってしまったため,次年度の予算に計上した.
|
次年度使用額の使用計画 |
実験装置の製作に必要な機械・電子部品の購入に使用する.
|