研究課題/領域番号 |
16K21074
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
原田 守啓 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (00647042)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 河床環境 / 生息場評価 / 数値計算 / 粗度層 / 石礫床河川 / 数値計算モデル |
研究実績の概要 |
本年度は,以下の3つの事項に関わる研究上の進展があった. (1)河床環境に依存する魚類・底生生物の生息場を直接的に表現できる数値シミュレーションモデルの開発が進んだ.河川シミュレーションソフトIRICの Nays2Dソルバーの開発者の許可を得てソースコードを修正し,河床材料粒度分布と,これに応じた流水抵抗,河床空隙率を同時に評価可能な形に改良を行なった.実河川への適用に先立って,既往の移動床水理実験結果の再現計算を行なった結果,流速・水深の空間分布に加え,河床変動後の河床形状,河床表層の粒度分布についても,従来モデルに対して大幅な改善が見られた.河床環境に関わる主要なパラメータの全般において計算精度の改善が見られた.[論文投稿準備中] (2)石礫床上の浅い流れ場における粗度層(Roughness layer)を含む流速分布の簡易な表現方法について,研究が進展した.河床材料の代表粒径,流量,河床勾配等を与条件として,流速の鉛直分布を簡易に求める手法について検討を行った.カルマン定数,粗度層高さの上限等の変数の決定に課題を残すものの,対数分布則を仮定するよりも,実際の流れ場に近い流速分布が得られる目途がたった.また,河床表層の凹凸と流れの鉛直分布を与条件とし,遊泳性魚類の生息場(遊泳空間)の定量的な評価手法を提案した.[論文2,発表1,2] (3)石礫の間を砂が流下する条件下における流砂量式の表現の改良を目的とした実験を行い,石礫間を砂が移動する際のstep length とpickup rateに着目した解析を行った.これにより,既存の流砂量式に対して流砂のstep lengthはかなり小さく抑制されている一方,step lengthは石礫によって生じる強い乱れによって大きく変動していることが明らかとなった. [論文1,発表3]
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の主な計画は,河床環境モデルを平面二次元河床変動解析モデルに実装することと,これを検証するデータセットの整備を進めることであった.河床環境モデルのうち,河床材料-流水抵抗-河床空隙率を一体的に表現するモデルが完成し,過去の移動床水理実験の再現性が大幅に高まったことを確認している.これにより,流速,水深,河床材料,河床空隙率といった微生息場の評価に必要な主な指標の表現力を大幅に向上させることに成功した. さらに当初計画に加え,石礫床上を浅い流れが流れる際の流れ場の特徴である粗度層(Roughness layer)を含む流速分布の表現方法,これを利用した遊泳性魚類の生息場評価手法,石礫間を砂が流下する状況における流砂量式の改良など,モデルのさらなる向上に有益なサブ的研究課題も大幅に進展しており,予定以上の成果を挙げているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,河床環境モデルを実装した平面二次元河床変動解析モデルのさらなる改良を行い,サブ的課題で得た知見の実装を計るとともに,計画を上方修正し,実際の河川を対象とした生息場評価の性能を検証することを目標に研究を進める.具体的には,長良川扇状地区間におけるアユを対象とし,春季から秋季における生息場の評価,秋季における産卵場適地の評価を試みる.アユは我が国の主要な淡水産有用魚種であるだけでなく,石に付着する藻類を主食とすること,産卵場は出水等によって形成された礫・砂利が堆積した瀬尻を使うことなど,河床環境に対する依存性が高い魚種である.そのため,アユを対象とした生息場評価は,本研究課題が開発する解析モデルの性能評価に適していると考えられる.
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