研究実績の概要 |
注意欠如・多動性障害(以下,ADHD)をもつ子どもは、増加の一途を辿っており、発達障害の中で最も有病率が高い(DSM-5,2013)。児の予後は厳しく、不注意や多動性・衝動性の改善に乏しいケースが多い(Faraone et al.,2006)だけでなく、周囲からの叱責、いじめ、仲間はずれといった社会生活上の問題が生じやすい(Reinhardt et al.,2013; Nigg.,2013)。このような社会生活上の問題は、ADHDの障害特性、すなわち不注意や多動性・衝動性そのものに由来しており、見過ごせばさらなる困難や周囲からの不適切な関わりによって、情緒的な混乱をはじめ二次的に精神医学的合併症を生じる(二次障害:齊藤,2009;杉山,2003)。また、ADHD児が青年期、成人期以降において反抗挑戦性障害、素行障害や気分障害、物質使用障害を併存することもよく知られている(Thapar et al.,2015; Fischer et al.,2002)。予後を改善するため、早期の介入が必要であることが指摘をされている(Young et al.,2010)が、乳幼児期の落ち着きのなさはADHD以外の診断を持つ子どもたちも呈しやすいとされていることから、乳幼児期におけるADHDのに関しての知見は限られている。 したがって、乳幼児期におけるADHDの発達上の特性を明らかにすることは、重要な課題である。本年度は、静岡県浜松市における大規模出生コホート(HBC-Study)にエントリーしている母子を対象に、これまでの追跡を継続しつつ、6歳時点における、ADHD-RSでの不注意と多動性・衝動性の評価などの測定を実施した。現在までに、1000名程度の母子のデータの収集が終了した。
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