研究実績の概要 |
1.研究目的:注意欠如・多動性障害(ADHD)は、文化圏を問わず子どもの約5%および成人の約2.5%に生じることが示されており、発達障害の中で最も有病率が高い(DSM-5,2013)。ADHD児の予後は厳しい(Reinhardt et al.,2013; Nigg.,2013)。ADHDが抱える予後不良の問題を改善するためには、早期の介入が必要であることが指摘されている(Young et al.,2010)。しかしながら、ADHDの早期兆候に関する知見は、日常の臨床では容易に測定できない生物学的指標を利用したものが多く、臨床的観察ともマッチしない。そこで、本研究では、子どもの発達をつぶさに観察する出生コホートデータを利用して、学童期のADHD症状を予測する乳幼児期の予兆・行動学的予測指標を、明らかにすることを目的とした。 2.実施内容:28年度に引き続き、浜松母と子の出生コホート (HBC Study) を継続しつつ、各種データを収集及び一部解析を行った。分析の手順として、6歳時の発達検査の際に、ADHD-RSを実施した。これまでの発達検査にて収集がされた18・24・32ヵ月齢の神経発達の指標を各領域ごと3群に分け、ADHD-RSを従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。なお、神経発達の測定には、Mullen Scales of Early Larning(MSEL; Mullen,1995)を用いた。 3.結果:ADHD-RSの不注意、多動性・衝動性、混合型を目的変数とした多項ロジスティック回帰分析の結果、①32カ月時の視覚受容のスコアが1SD未満であった場合(low)、6歳時のADHD-RSで不注意型、混合型と分類されるリスクがともに高いことが示された。②32ヵ月の表出言語のスコアがlowであった場合、混合型と分類されるリスクが高いことが示された。
|