研究課題/領域番号 |
16K21081
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井上 貴行 名古屋大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (40749272)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 身体機能 / 理学療法 / 運動耐容能 / 運動療法 |
研究実績の概要 |
本研究では運動療法の適応が困難な呼吸器疾患患者に対する電気刺激療法の効果を検証するため,平成29年度は電気刺激療法を行う上での至適条件などを検索する予備的な検討を行った.そこで,様々な呼吸器疾患を有する患者の身体機能や運動機能の特性を把握するため,後方視的な解析を行った.評価指標には本課題と同様に,肺機能,握力,等尺性膝伸展筋力(下肢筋力),6分間歩行試験における歩行距離(6MWD),生活の質(QOL)を評価する質問票のSF-36 ver2,COPDアセスメントテストを用いた.その結果,胸腺腫により全摘出術を施行された症例においては,術前の6MWDが498m以下のものは以上のものに比べて術後の初回歩行施行までの日数が遅延することを明らかとした.また,肺切除術施行患者において,術前の6MWDが450m以下のものはそれ以上のものに比べ術後肺炎を合併する割合が高いことを明らかにした.両報告より,6MWDによって示される運動耐容能が術後合併症発生リスクに関連することを示し,6MWDの有用性をあらためて示した.これら対象とした症例はすべて呼吸器疾患患者であり,呼吸器疾患患者の運動耐容能についての基礎的な情報を得るに至っている.また,入院COPD患者や重度呼吸器疾患(リンパ脈管筋腫症,閉塞性細気管支炎,肺動脈内膜肉腫)患者においては,運動療法を含めた呼吸リハビリテーションによって,身体機能や運動機能が改善する結果を得た.COPD患者の身体機能や運動機能,QOLの情報を得るに加え,研究対象の一部となる疾患患者における運動療法の効果についての情報を得るに至っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の計画は,呼吸器疾患を有する患者を対象に電気刺激の各種パラメータを設定し,実際に介入を行った前後での患者の状態変化を検討する予定であったが,対象となる患者の取り込み,実施環境の整備に難渋し,データの収集が十分には進まなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は実施環境の整備を進め,対象の取り込みを行い,実際に電気刺激療法を用いた介入を施行し,運動療法との併用効果の検証を進める.電気刺激療法を用いた介入を優先的に行い,得られた情報の解析を順次行っていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度に対象症例の取り込みを進め,採血後の残存血清を用いてMyostatinの血中濃度測定を行うことや,胸部CT画像を用いた脊柱起立筋の横断面積の計測を行う予定とし,測定キットや解析用のソフトウェアの購入を計画していた.しかしながら,対象症例の取り込みが十分に進まず,前述の物品の購入を行わずに平成30年度に繰り越すこととした. (使用計画)平成30年度には対象症例の取り込みを進め,Myostatinの血中濃度測定用キットの購入や解析ソフトウェアの購入を予定している.また,成果公表のために関連学会への参加,発表や,海外雑誌への論文投稿に使用することを予定している.
|