本研究では運動療法の適応が困難な呼吸器疾患患者に対する電気刺激療法の効果を検証するため,平成30年度は対象患者に電気刺激療法を行う予定であったが,対象患者の取り込みが進まず,実際に結果を得るには至らなかった. しかしながら,電気刺激療法の対象となり得る重度呼吸器疾患(肺リンパ脈管筋腫症)患者について,重度の呼吸機能障害,身体機能の低下を認め,複数回の入退院を繰り返し,さらに運動耐容能(6分間歩行距離)や筋力(握力,膝伸展筋力),QOLは低下したが,低強度の運動療法により膝伸展筋力は維持および向上する傾向を示す知見を得た.この知見は国内学会誌にて報告した。また,慢性閉塞性肺疾患患者においては,運動療法を含めた外来での呼吸リハビリテーションによって,身体機能(呼吸機能,骨格筋量)や運動機能(6分間歩行距離,呼吸筋力,下肢筋力),活動量(歩数)が改善する結果をえ,関連学会にて発表した. 一方,疾患は異なるものの,侵襲が大きく,術後に長期入院を強いられ,身体機能や運動機能の低下を認める肝臓や胆嚢,膵臓の手術患者において,術前に運動と栄養療法を行うことで運動耐容能や骨格筋量は向上し,さらに術後在院日数が短縮する知見も得るに至り,国際誌にて報告した. これらより,運動療法により身体機能や運動機能が向上することを改めて示す知見を得ることができ,筋収縮を惹起する電気刺激療法の効果につながる情報を提供するには至った.
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