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2016 年度 実施状況報告書

シロアリの兵隊分化における幼若ホルモンによる分化運命決定に関する分子発生学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K21085
研究機関日本大学

研究代表者

栂 浩平  日本大学, 文理学部, 助手 (10726798)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードカースト分化 / 幼若ホルモン / 兵隊分化 / シロアリ
研究実績の概要

環境要因に応答して異なる二つ以上の表現型を示す現象は表現型多型と呼ばれる.社会性昆虫であるシロアリのカースト分化もその一例である.カースト分化において,幼若ホルモン(JH)が重要な役割を担うが,このホルモンが発生の切り替えを可能にする分子発生機構については不明な点が多い.本研究ではJH量の上昇によって起こる兵隊分化に注目し,JHの下流で働く遺伝子の機能の解明を目的とする.本年度はタカサゴシロアリを材料に,特にMuscle segment homeobox (Msh)についての機能解析を行う.
兵隊への分化はJH類似体投与によって人為的に誘導できるが,ワーカー脱皮の人為的な誘導はタカサゴシロアリではできなかった.他種のシロアリではエクダイソン投与によってワーカー脱皮を誘導できるため,本種でも確かめたが,ワーカー脱皮は誘導できなかった.
シロアリの初期コロニーでは,薬剤を使わずに兵隊やワーカーの脱皮を観察できるため,有用である.本種でも,初期コロニーにおいて個体の追跡を可能にする手法を確立した.
これまでにMshのRNAiにより,頭部の一部が兵隊様の形態になることが示唆されていた.今年度はインジェクションの時期を変えて,兵隊分化過程においてMshのRNAiを行った.その結果,ワーカー様の個体が出現した.しかし,得られた個体数も少ないため,再現性の確認が必要である.Mshの発現量は,前兵隊分化過程の前半で急激に上昇して減少し,その後gut purge後(形態形成期)に発現が上昇することがわかっていた.したがって,今回のワーカー様の個体の出現は,前兵隊分化初期のMshの発現をノックダウンできたことによるものと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では,Mshのノックダウンが他の遺伝子に与える影響を発現量解析で行う予定であった.しかし,MshのRNAiで,前兵隊への脱皮時期がばらつくことがわかり,発現量解析を行ったとしても正確な発現量を反映しているか疑問が残った.しかし,MshのRNAiによって当初予想していなかった表現型を得られた.また,他の解析の結果から,Mshにはアイソフォームがいくつかあることも明らかとなった.以上より,当初の計画通りにいかない点もあったが,予想外な興味深い結果も得られたため,順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

平成29年度は,Msh以外の発生のタイミングを制御する遺伝子の探索を行うことを大きな目的とする.Mshは翅原基で発現する遺伝子として知られるため,翅形成に関わる遺伝子と兵隊分化は深く関係している可能性がある.そのため,翅形成に関わる遺伝子群を兵隊分化過程においてノックダウンする.前年度に明らかになった初期コロニーを積極的に利用して,ワーカー脱皮における機能も同時に明らかにすることで,兵隊およびワーカーの分化過程における違いも明らかにする.
上述したタカサゴシロアリで明らかになった遺伝子については,系統的に離れた他種のシロアリを用いて,同様の実験を行うことで,シロアリの兵隊分化における共通性も明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

研究材料であるシロアリは,石垣島や西表島で採集しているが,採集してきたシロアリを良い状態で維持できたため,今年度は旅費の利用が予定より少なかった.また,使用したキットや試薬類もキャンペーン価格で買ったものがいくつかあり,消費が予想より少なかった.

次年度使用額の使用計画

RNAiや発現部位解析に用いるキットは高額である.次年度は,これらの解析を中心にかつ大量に行うため,今年度に繰り越した研究費は,これらの解析のキット類の購入に使用する予定である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Soldiers are differentiated from male larval stages in incipient colonies of Nasutitermes takasagoensis (Isoptera: Termitidae)2017

    • 著者名/発表者名
      Kouhei Toga, Chieka Minakuchi, Kiyoto Maekawa
    • 雑誌名

      Applied Entomology and Zoology

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] シロアリの兵隊分化に関する分子発生学的研究2016

    • 著者名/発表者名
      栂 浩平
    • 学会等名
      第10回昆虫ワークショップ
    • 発表場所
      富士箱根ランド(静岡県田方郡)
    • 年月日
      2016-08-31 – 2016-09-01
  • [備考] 日本大学文理学部 生命科学科教員情報

    • URL

      http://kenkyu-web.cin.nihon-u.ac.jp/Profiles/129/0012835/profile.html

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公開日: 2018-01-16  

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