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2016 年度 実施状況報告書

転写超複合体による植物の細胞周期制御とその作用メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 16K21088
研究機関名古屋大学

研究代表者

鈴木 俊哉  名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (80773712)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード細胞周期 / 転写因子 / 胚発生
研究実績の概要

シロイヌナズナには,ヒトのDREAM complexを構成するLIN9と類似性の高いタンパク質をコードする遺伝子が3個存在するが(ALY1~3),それらの機能はわかっていなかった.そこで今年度は,このALYの機能を明らかにすることに重点をおいて研究を行った.それぞれの単独変異体を入手して表現型を調べたところ,野生型と違いは見られなかった.ALYは機能が重複していると考えられたため,単独変異体の交配による三重変異体の作出を試みた.しかし配偶体致死により得ることができなかったため,二重変異体の解析を行った.その結果,種子や幼植物体の巨大化や胚発生の異常など,抑制型R1R2R3-Mybの変異体とよく似た表現型が見られた.特にaly1 aly2二重変異体では,分裂パターンの異常な胚や,発達の停止した胚珠が高頻度に出現することがわかった.今年度の研究から,ALYは特に初期胚の発達に重要な役割を果たしているという新たな知見が得られた.続いてaly1 aly2二重変異体の幼植物体を用いて,RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行った.その結果,発現が上昇していた遺伝子の中に,E2FのターゲットであるG1/S期遺伝子とR1R2R3-MybのターゲットであるG2/M期遺伝子が多く含まれることがわかった.これは,ALYがMyb-E2F超複合体の一員として,細胞周期関連遺伝子を負に制御している可能性を示すものと考えられた.
シロイヌナズナにはE2Fをコードする遺伝子が6個存在し,E2FA~C,E2FD~Fの2つのグループに分けられるが,多重変異体の解析はほとんど行われていなかった.そこで今年度は,それぞれのグループの三重変異体を作出して解析を行った.その結果,e2fa e2fb e2fc三重変異体の生育は正常であったが,e2fd e2fe e2ff三重変異体は植物体が小さくなるなどの異常を示すことがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の研究計画のうち,DREAM complex構成因子の植物ホモログの解析については,ALYに関する研究に順調な進展が見られた.多重変異体を作出し,その表現型解析やトランスクリプトーム解析の結果から,ALYの機能について新たな知見が得られた.
一方でMyb-E2F超複合体の構成因子の同定については,研究の前提となる事実に疑問が生じ, まずはそれを確認するための実験を優先して行った.活性化型のE2FとされていたE2FAとE2FBの二重変異体のRNA-seq解析を行ったところ,発現量が増加した遺伝子にE2FのターゲットであるG1/S期遺伝子が多く含まれていた.一方で抑制型のE2FとされていたE2FCの変異体では,G1/S期遺伝子の変動がほとんど見られなかった.これらの結果は,これまでに報告されていたE2Fの機能と矛盾し,残りの3個のE2F(E2FD~F)を含めて機能の冗長性について再検証する必要があるとの結論に至った.そこで今年度は,E2Fの多重変異体の作出と解析を優先して進めたため,今年度に計画していた共免疫沈降などの実験をほとんど進めることができなかった.
以上のことから,全体的な進捗状況として「やや遅れている」とした.

今後の研究の推進方策

研究計画のうち,DREAM complex構成因子の植物ホモログの解析については,ALYについての研究を引き続き行う.ALYの変異体とR1R2R3-MybまたはE2Fの変異体を交配し,aly mybまたはaly e2f多重変異体を作出する.多重変異体の表現型観察やトランスクリプトーム解析を行い,それぞれの単独変異体で見られる表現型と比較することによって,ALYとR1R2R3-MybやE2Fとの関連を遺伝学的に明らかにする.またALYの三重変異は配偶体致死を引き起こすことがわかったが,遺伝子導入によって三重変異体の個体を取得し,その表現型を調べる.具体的には,DNA配列の部位特異的組換えを誘導するCre/loxPシステムを二重変異体に導入し,受精後の個体発生が進んでから残りの遺伝子を欠損させるといった方法を考えている.
Myb-E2F超複合体の構成因子の同定については,まず前年度に作出したe2fの三重変異体(e2fa e2fb e2fcおよびe2fd e2fe e2ff)のトランスクリプトーム解析を行う.E2FのターゲットであるG1/S期遺伝子の発現にどのような変動が見られるかを調べ,E2Fの機能やその冗長性を明らかにする.続いて,前年度に計画していた共免疫沈降と質量分析の実験を進める.E2Fの機能がはっきりとしなかった場合は,実験の対象を活性化型と抑制型の機能がわかっているR1R2R3-Mybに絞り込む.その後に計画していたChIP-seq解析については,最低でも一つのサンプルでは行えるように実験を進める.

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公開日: 2018-01-16  

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