研究課題/領域番号 |
16K21093
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
徳 悠葵 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60750180)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノコイル / 金属被覆 / ナノワイヤ / 薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究は,微小コイル形成法「コア流動法」を利用し,芯付ナノコイルを創製する.さらにその応用である「導電性ナノコイル探針の開発」を実現することが目的である.平成28年度は,芯付ナノコイル創製および実験に必要な装置の開発に関する基礎実験を行った.まず,(Ⅰ-1)光学顕微鏡用マニピュレータの開発および(Ⅱ-1)特性評価用小型プローブの開発では,光学顕微鏡下にて動作するたわみ検出機能付きの簡易マニピュレータを開発した.ここでは,圧電振動子および,圧電薄膜の利用によってマニピュレーション用プローブを振動させ,ナノ材料を振動慣性力によって分離・再配置する技術について検証を行った.さらに,原子間力顕微鏡の要領によってプローブのたわみ検出を行い,ナノワイヤの破断に至る際の力学特性評価に成功した. また,(Ⅰ-2)ナノワイヤの巻付け加工実験では,独自の製膜技術の検討により,ナノコイルの寸法制御に関する実験を行った.特に,製膜時のターゲット-試料間の位置関係がナノコイルに生じるピッチに及ぼす影響について調査を行った.さらに,原子間力顕微鏡用プローブの探針へのナノワイヤの配置・固定方法の検討や,予備実験としてナノワイヤの巻き付け加工を行った.ナノワイヤの固定方法では,紫外線硬化樹脂を利用する方法や,接触抵抗を利用した電流印可による溶接実験を調査し,十分な固定強度を得ることができた.なお,ナノワイヤの配置技術については位置決め精度の悪さにおいて検討の余地が残った.今後の方針として下記の推進方策に加え,実験に必要なマニピュレーション技術の精度向上についても考慮する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,芯付ナノコイル創製および実験に必要な装置の開発に関する基礎実験を行った.まず,(Ⅰ-1)光学顕微鏡用マニピュレータの開発では,圧電振動子,および圧電薄膜の利用によってマニピュレーション用プローブを振動させ,ナノ材料を振動慣性力によって分離・再配置する技術について検証を行った.また,これらの検証を行うための光学顕微鏡下にて動作する簡易マニピュレータの開発も並行して行った.次に,(Ⅰ-2)ナノワイヤの巻付け加工実験では,ナノコイルの寸法制御に関する実験を行った.コア流動法の実験工程のうち,スパッタリング時におけるターゲットと試料間の位置関係について実験を行い,作成するコイルのピッチ量変化を調査した.原子間力顕微鏡用プローブの先端にナノワイヤを取り付け,プローブを囲うようにナノワイヤを変形させることに成功した.最後に,(Ⅱ-1)特性評価用小型プローブの開発においては,作成したナノコイルの特性把握の前段階として,ナノワイヤのような1次元ナノ材料の強度評価試験機能を(Ⅰ-1)にて開発したマニピュレータに付加した.具体的な強度評価原理は,原子間力顕微鏡の要領によるプローブのたわみ検出であり,ナノワイヤの破断に至る際の力学特性評価に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度(最終年度)では,芯付ナノコイルの特性評価・導電性ナノコイル探針の開発を目的に,(Ⅱ-2)各種特性評価試験および応用試験(Ⅲ-1)導電性ナノコイル探針の作製(Ⅲ-2)導電性ナノコイル探針の実用試験を行う.まず,(Ⅱ-2)では,(Ⅱ-1)で開発したプローブを用いてナノコイルの特性評価を行う.具体的にはコイルに通電した際の発生電磁波に対するプローブのたわみや,共振周波数の変化を評価し,電磁気特性を定量的に評価する.また,通電による発熱量を理論的に調査し,熱耐性も合わせて評価する. (Ⅲ-1)では,芯付ナノコイル創製技術を応用し,導電性ナノコイル探針を開発する.初年度の(Ⅰ-2)にて既に着手済みであるが,既存の原子間力顕微鏡用マイクロカンチレバーに対し,探針部へ導電性ナノコイルを巻きつけることにより,ナノ電磁石を有した探針として開発する.最後に,(Ⅲ-2)では開発した導電性ナノコイル探針を原子間力顕微鏡に搭載し,試料の表面形状を走査・計測するモードを利用して,金属ナノ材料の導電率・磁化特性の検出実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は,3次元油圧マニピュレータを購入し,既存のマニピュレータと併せて1対の光学顕微鏡下ナノマニピュレータを開発する予定であったが,マニピュレータに取り付けるプローブの開発に時間を要したため,購入を次年度に先送りにした.また,ピエゾドライバー一式を購入し,各マニピュレータの高精度位置決めを実現する予定であったが,同様にプローブ開発に時間を要したため,購入を次年度に先送りしたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に購入計画を先送りした備品の購入に充て,研究計画の推進を図る.
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