研究課題
本研究は,年縞を保存する湖成層である,モンゴルの白亜系シネフダグ層と北米の始新統グリーンリバー層を対象とし,白亜紀中期および始新世前期“超温室期”における年~十年スケール気候変動の実態解明を試みる.これまでの研究で,シネフダグ層は白亜紀中期における太陽活動に起因した十年規模気候変動が記録されていることが明らかになってきたので,グリーンリバー層でも太陽活動および十年規模気候変動が見られるのかを検証する.さらに,地球軌道要素変動(数万~数十万年規模)の日射量極大期・極小期において,北半球中緯度の陸域気候システム変動が,年~十年スケールでどのように変動していたのかを詳細に解明することを目標とする.本年度6月中旬に、ユタ州およびコロラド州に露出するグリーンリバー層の露頭調査と試料採取を行った.露頭調査の結果,約2mおよび10mの周期で岩相が変動しており、モンゴル白亜系の湖成層と同様に,地球軌道要素変動を反映した湖水位変動を記録していることが明らかになった.また一部の層準ではラミナが良く発達した頁岩が見られ,蛍光顕微鏡での解析の結果,約100年周期で藻類生産量が増減している可能性が明らかになった.またグリーンリバー層に記録される古気候情報を定量的に復元するため,XRFやICPMSを用いて主要・微量元素組成の分析も行った.また本年度2月上旬には,グリーンリバー層のコア試料が保管されているコロンビア大学ラモント地球研究所を訪問し,コア試料の採取も行った.これらの成果は日本地球惑星科学連合2016年大会および第2回地球環境史学会で招待講演として口頭発表し,国際学会Goldschmidt2016でポスター発表した.また現在1編の筆頭著者論文と3編の共著論文を国際誌に投稿・査読中.
2: おおむね順調に進展している
モンゴル白亜系湖成層の研究では,蛍光顕微鏡による年縞ラミナ画像解析によって,1090年分の夏季強度および年間降水量の変動を復元に成功し,夏季強度が約11年,40年,90~120年,220年,360~400年という,現在の太陽黒点変動および過去の14C変動から推定されている太陽活動の変動と類似した周期の変動が検出された.始新統グリーンリバー層の研究では,露頭調査と採取した試料の主要・微量元素組成分析は予定通り進んでおり,今後分析結果を解析して古気候変動の解釈を行っていく.またラモント地球研究所で連続的なコア試料の採取も行うことが出来た.
モンゴル白亜系の年縞ラミナ解析によって得られた,太陽活動の変動と類似した周期で夏季強度が変動しているという結果は,今後は第四紀の記録とも比較検討することにより,太陽活動と白亜紀の十年規模気候変動の応答様式の知見として国際誌論文としての公表を進める.始新統グリーンリバー層の研究では,次年度は特にラモント地球研究所で採取したコア試料のラミナ解析と地球化学分析を進め,今後は始新世に関しても年~百年スケールの古気候変動を進める予定である.
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