本研究課題では,人間活動と密接な関係がある衛星夜間光データを用いて,データ制約のある途上国を含めた全世界を対象に適用可能な,物質ストック量を推計する手法の開発を行うことを目的としている.平成28年度は,土木構造物として蓄積している物質ストック量の推計と,衛星夜間光データの収集と解析を行った.前者については,建築物,道路,鉄道,空港.港湾・漁港,ダムの6種の土木構造物を対象に,住宅地図データや国土数値情報のデータを入手して,構造種や面積に合わせた建設資材投入量を乗じることで,メッシュ単位での物質ストック量の推計を行った.後者については,NOAAのホームページより都市部においても飽和現象の発生しない「放射輝度更正データ」をダウンロードし,日本周辺地域を抽出する処理を行った.両者のデータを用いて衛生夜間光を非説明変数とする物質ストック量の推計式を算出することにより,衛星夜間光による物質ストック量推計式の開発と,地域的な誤差などの検証を行った.推計には,建築物の延床面積と,道路面積を用いた.その結果,過大推計の地域として成田国際空港があり,観測輝度に相当する建築物が存在しない空港の特徴が出た結果となった.一方,過少推計となる地域の傾向として,郊外の山間部に位置する集落などが挙げられる.今後,日本以外の海外を含めた他地域で適用と精度検証を行うことで,さらに精緻な構造物ストック推計モデルとなることが期待できる.
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