本研究課題では,人間活動と密接な関係がある衛星夜間光データを用いて,データ収集・整備・精度に課題がある途上国を含めた全世界に適用可能な,物質ストック量を推計する手法の開発を行うことを目的としている.平成29年度は,平成28年度に整備した土木構造物の物質ストック量について,新たに更新された建築物と道路データを用いて,関東地方をケーススタディとしてストック量と衛星夜間光の輝度との関係性について検討を行った.その結果,輝度と建物延床面積とは強い相関関係が示され,間光が土木構造物量推計に有用であることが示された.しかし,その傾向から乖離した地域もいくつか見られた.丸の内地区は高層ビルが密集しているが,北側にある皇居地区の輝度が小さいことに起因して,全体の傾向よりも輝度に比べ建物延床面積が大きくなっている.また,東京湾岸地区では夜間操業する工場が多く立地しているため,輝度に比べて建物延床面積が小さくなっている.以上より,今後他地域へ拡張するとともに,周辺メッシュを含めた空間的な関係を考慮した精度検証が必要となる. また,海外の土木構造物に関するGISデータの入手可能性を含めた検討を行った.海外では日本ほど土木構造物のGISデータが整備されておらず,公開されていても精度に課題があるものが多くみられた.そのため,来年度以降も引き続きデータ利用を検討するが,GISデータが豊富にある日本でモデル開発を行い,そのまま国外に適用することを考えている.
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