研究課題/領域番号 |
16K21101
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
徳田 深作 京都大学, 医学研究科, 医員 (00433277)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / クローディン / 浸透圧 / 静水圧 / 癌 |
研究実績の概要 |
上皮細胞は静水圧や浸透圧などの細胞外環境の変化に応じて様々な細胞機能の調節を行うことが分かっている。本研究では上皮細胞による細胞外環境変化の感知と細胞機能調節のメカニズム解明し、癌治療などへの臨床応用を目指している。これまでの研究結果から、上皮の管腔側と基底側の静水圧差や浸透圧差が様々な上皮機能に影響を及ぼすことが分かっている。これらの圧差はタイトジャンクションに直接加わるためタイトジャンクションが細胞外環境変化の感知に関与する可能性が考えられたため、タイトジャンクションを構成してその透過性制御に関わるclaudinを遺伝子ノックアウトした細胞を樹立してその影響の検討を行った。まず、MDCKⅡ細胞でclaudin-2やclaudin-4を遺伝子ノックアウトした細胞クローンを樹立した。MDCKⅡ細胞はMDCKⅠ細胞やCaco-2細胞と比べて静水圧による上皮の重層化反応が弱いため、浸透圧に対する応答反応について検討を行った。その結果、管腔側の相対的な低浸透圧によって経上皮の陽イオン選択性が徐々に低下し、同時にタイトジャンクション近傍にbleb構造が形成され、細胞骨格や細胞形状にも変化が認められた。次にclaudin-2ノックアウトクローンで管腔側の低浸透圧が及ぼす影響を検討したところ、claudin-2ノックアウトクローンでは管腔側を低浸透圧にしても経上皮の陽イオン選択性の低下が生じなくなるとともに、細胞骨格や細胞形状の変化も認められなくなった。これらの結果から、MDCKⅡ細胞において、claudin-2が管腔側と基底側の浸透圧差を感知した様々な細胞機能の調節(経上皮イオン輸送や細胞骨格・細胞形状の調節)に関与することが示唆されている(Tokuda et al., PLoS One 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上皮細胞が細胞環境変化を感知するメカニズムにタイトジャンクションを構成するクローディンが関与することが明らかになっており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Claudinが細胞外環境変化の感知に関与することが明らかとなったため、今後はMDCKⅡ細胞でclaudin-2以外のclaudinを遺伝子ノックアウトした細胞の樹立を進め、それぞれのclaudinの役割を明らかにする。さらに、静水圧による重層化反応が顕著に認められるMDCKⅠ細胞やCaco-2細胞でもclaudinのノックアウトクローンを樹立する実験系を確立して樹立を進め、静水圧による細胞極性・細胞増殖などの調節反応におけるclaudinの役割を明らかにする予定である。さらに、claudinによる細胞外環境感知後の細胞内シグナル伝達経路や分子機構の解析も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウト細胞の樹立や浸透圧の影響の解析などの実験が比較的順調に進み、論文発表まで進むことことができたため(一報発表、一報投稿中)。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、別の細胞でノックアウトクローンを樹立するために新たな実験系の確立が必要であり、静水圧の影響については様々な細胞機能の解析を行う必要がある。 これらの実験で次年度に繰り越した経費を用いる予定である。
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