研究実績の概要 |
上皮細胞は静水圧や浸透圧などの細胞外環境の変化に応じて様々な細胞機能の調節を行っていると考えられている。本研究では上皮細胞による細胞外環境変化の感知と細胞機能調節のメカニズム解明を目指している。 これまでの研究結果から、上皮の管腔側と基底側の静水圧差や浸透圧差が様々な上皮機能に影響を及ぼすことが分かっている。これらの圧差はタイトジャンクションに直接加わると考えられ、細胞外環境変化の感知にタイトジャンクションが関与することが予想される。昨年度の研究結果から、タイトジャンクションを構成してその透過性制御に関わるclaudinの中で、claudin-2が浸透圧差の感知に関与することが明らかとなった。 本年度は上記の研究をさらに進めるため、他のclaudinをノックアウトした細胞の樹立を行った。その結果、TALENsを用いた遺伝子工学技術により、MDCK II細胞においてclaudin-4ノックアウト細胞の樹立に成功した。claudin-4ノックアウト細胞の生理学的特性を検討したところ、タイトジャンクションの透過性に明らかな変化は認められなかった。 さらにclaudin-4とclaudin-2をダブルノックアウトした細胞を樹立して検討を進めた。これらの細胞を長期に培養したところ、培養6日目以降からタイトジャンクションの透過性が徐々に上昇するとともに陰イオン選択性が高くなることが明らかとなった。さらに、claudin-2ノックアウト細胞でもclaudin-2とclaudin-4のダブルノックアウト細胞でもこれらの傾向に明らかな差は認められなかったことから、claudin-4は長期培養時に認められる陰イオン透過性に関与していないことが明らかとなった (Tokuda et al., PLoS One 2017)。
|