研究課題/領域番号 |
16K21105
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日下部 武敏 京都大学, 工学研究科, 助教 (40462585)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 難分解性有機物 / 溶存有機物 / 琵琶湖 / 微生物群集 / 生分解性試験 |
研究実績の概要 |
国内の主要な湖沼において、微生物に分解されにくい難分解性有機物が増加・蓄積しているとの報告があり、湖沼の炭素循環や今後の有機物管理を考える上で、湖沼有機物の起源や化学的特性、時空間的変動を理解することは極めて重要である。本研究は、湖沼の微生物群集が産出する難分解性有機物に着目してその化学的描像を究明すると共に、環境動態を解明を目指すものである。本研究では、琵琶湖における難分解性溶存有機物(R-DOM)の化学組成と環境動態を分子レベルで解明するため、湖水と河川水に加えて、モデル基質、藻類、土壌等に対して生分解性試験を実施して、有機物代謝の規定要因の把握と、高度機器分析(FT-MS、NMR等)による網羅的な有機構造解析を実施する。 平成28年度は、モデル基質(グルコース、グルタミン酸ナトリウム)、湖水天然有機物(NOM)(琵琶湖北湖)、河川水NOM(安曇川)、琵琶湖藻類(北湖)、培養藻類(Microcystis aeruginosa、Staurastrum dorsidentiferum)に対して生分解性試験を実施した。本試験に使用した植種菌は、綱の異なる微生物株(3種)および琵琶湖微生物群集(湖水)であった。生分解性試験後に得られたDOMの化学組成を、琵琶湖DOM(北湖、南湖)、河川DOM(安曇川、野洲川の上・下流)、下水二次処理水中DOM(EfOM)のそれと比較した結果、微生物が産出したDOMの組成は、河川水DOMやEfOMよりも湖水DOMの組成に近いことが明らかになった。また、培養藻類の生分解性試験の結果より、藻体を構成する成分ごとに分解挙動が異なること、藻類の光合成によって生産された有機物の多くが直接無機化されていること等が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、湖沼の微生物群集が産出する難分解性有機物に着目してその化学的描像を究明すると共に、環境動態を解明を目指すものである。本研究では、琵琶湖における難分解性溶存有機物(R-DOM)の化学組成と環境動態を分子レベルで解明するため、湖水と河川水に加えて、モデル基質、藻類、土壌等に対して生分解性試験を実施して、有機物代謝の規定要因の把握と、高度機器分析(FT-MS、NMR等)による網羅的な有機構造解析を実施する。 平成28年度は、モデル基質(グルコース、グルタミン酸ナトリウム)、湖水天然有機物(NOM)(琵琶湖北湖)、河川水NOM(安曇川)、琵琶湖藻類(北湖)、培養藻類(Microcystis aeruginosa、Staurastrum dorsidentiferum)に対して生分解性試験を実施した。本試験に使用した植種菌は、綱の異なる微生物株(3種)および琵琶湖微生物群集(湖水)であった。当初の計画では、起源が明白に異なる有機物として土壌を想定したが、平成28年度は流入河川水中の微細粒子態有機物(FPOM)を用いた生分解性試験を実施した。このFPOMの起源は琵琶湖流域の森林土壌由来と考えられるため、他生性有機物の代表として採用したものである。また、固相抽出(SPE)により生分解性試験後の溶存有機物を精製・濃縮してFT-MSおよびNMRによる網羅的な有機構造解析を実施した。このように、平成28年度は当初の研究計画どおり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、湖沼の微生物群集が産出する難分解性有機物に着目してその化学的描像を究明すると共に、環境動態を解明を目指すものである。本研究では、琵琶湖における難分解性溶存有機物(R-DOM)の化学組成と環境動態を分子レベルで解明するため、湖水と河川水に加えて、モデル基質、藻類、土壌等に対して生分解性試験を実施して、有機物代謝の規定要因の把握と、高度機器分析(FT-MS、NMR等)による網羅的な有機構造解析を実施する。 平成29年度は、当初の研究計画どおり、継続して生分解性試験を実施するとともに、微生物群集による有機物代謝過程における規定要因の把握に着手する。また、平成28年度の成果より、琵琶湖R-DOMの生産に微生物群集が強く関わっていることが明らかとなった。そこで、微生物群集による有機物代謝過程における規定要因を詳しく調べるため、微生物群集の増殖解析を行うとともに、主に水温の影響を定量的に把握していく予定である。
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