研究課題
本研究では、胎生期の肝臓に特異的な幹細胞である肝芽細胞 (Hepatoblast)の増殖と分化を制御する機構を解明し、その異常がどのように肝芽腫の形成をもたらすのか理解することを目標としている。前年度の研究において、肝芽腫において高頻度に活性化が見られるYAPとβ-cateninが、それぞれ長期増殖能とWnt非依存性を肝芽細胞に賦与することを見出した。また、YAPとβ-cateninの両方が同時に活性化するとIGF-1の発現が上昇し、増殖因子非依存的な肝芽細胞の増殖と生存が促進されることも明らかになっていた。そこで今年度は、YAPやβ-cateninを活性化させた肝芽細胞を免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成能の有無を検討した。その結果、腫瘍形成にはYAPとβ-cateninの活性化だけでは不十分であり、Mycの活性化も必要であることが明らかになった。このMycの活性化については、肝芽細胞の分化の抑制と増殖の促進に必要であることも見出している。YAP、β-catenin、Mycの3因子が活性化した肝芽細胞は、免疫不全マウスにおいて胆管上皮様細胞、肝細胞様細胞、肝芽細胞様細胞の混在した腫瘍を効率よく形成した。これら複数の細胞種の存在は、初期の肝芽腫の特徴であり、3因子を導入した肝芽細胞による腫瘍形成は実際の肝芽腫の形成機構を模倣していると考えている。従って、今回の研究で確立された腫瘍形成法は、未だ有用なマウスモデルの存在しない肝芽腫の形成機構や治療法の研究に寄与することが期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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