本研究では、胎生期の肝臓幹細胞(肝芽細胞)の制御機構とその破綻が肝芽腫をもたらす機構の解明を目指した。独自の肝芽細胞培養法を用いた実験により、Hippo経路のエフェクター分子YAPの活性化が長期増殖能を、β-カテニンの活性化はWnt非依存性を、またYAPとβ-カテニン両方の活性化はIGF-1の誘導を介して増殖因子非依存性を賦与することが分かった。さらに免疫不全マウスへの移植実験により、YAPとβ-カテニンに加えてc-Mycの活性化により腫瘍が形成されることが示された。以上の結果は、肝芽細胞の制御機構と肝芽腫の発生機構の一端を解明するものであり、今後の肝芽腫の治療法の研究に寄与すると期待される。
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