研究課題/領域番号 |
16K21109
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小松 直貴 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (30737440)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生細胞イメージング / 細胞周期 / 細胞内シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
平成28年度はMEK阻害剤感受性細胞A375と抵抗性細胞A549のMEK阻害剤存在下における細胞周期進行を細胞周期インディケーターFucciを用いて生細胞タイムラプス観察し、さらに1細胞トラッキングによりFucci蛍光強度の時系列を得た。そこからG0/G1期とS/G2/M期の進行速度を定量し、MEK阻害剤が細胞周期進行に及ぼす影響を評価した。 その結果、MEK阻害剤感受性細胞ではMEK阻害剤により細胞がG0/G1期にアレストされること、さらに細胞周期のG0/G1期の進行速度がコントロール処理の半分以下に減少すること、結果としてS/G2/M期にいる細胞はコントロール処理と同程度の速度で細胞周期が進行し、細胞分裂の後G0/G1期でarrestする、という知見を得た。一方で抵抗性細胞ではMEK阻害剤存在下の細胞周期進行はコントロール処理とほぼ変わらなかった。用いたMEK阻害剤はERK活性を抑制するには十分な濃度であること、またmTOR阻害剤存在下ではいずれの細胞でも細胞周期進行速度の顕著な減少が観察されたことから、感受性細胞におけるG0/G1アレストの制御にはERK活性とmTORC1活性の両方が関与している可能性が示唆された。加えて、用いたMEK阻害剤濃度では感受性細胞のmTORC1活性は減少し、抵抗性細胞のmTORC1活性はほとんど減少しないことからERK依存的なmTORC1活性化は細胞周期進行、特にG0/G1期の進行において重要な役割を果たしていると考えられる。今後はERK活性およびmTORC1活性の動態を人為操作し、その際の細胞周期進行を定量計測することでERKおよびmTORC1活性が細胞周期進行の制御にどの程度十分であるか、検証が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞における細胞周期進行の1細胞レベルでの定量計測は解析に必要なプログラム整備の観点から、実施が遅れることが予想された。しかしながら当初の予定より早めに解析パイプラインを構築できたことから、細胞周期進行に関する解析を一気に進めることができた。一方でmTOR活性の光操作に関しては、mTORのみを活性化する系の構築ができていない。このためmTOR活性の人為操作および細胞周期進行への影響の定量解析が未着手である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はイメージングとERK活性の光操作の組み合わせにより、ERK活性動態がmTORC1活性および細胞周期進行におよぼす影響の定量解析を行う。 平行してmTORC1活性を選択的に活性化する系の構築およびこれを用いたmTORC1活性の光操作を行い、mTORC1活性動態が細胞周期進行におよぼす影響を定量解析する。 さらに光操作とイメージングにより得られた定量データから、細胞周期進行に必要十分なERKおよびmTORC1活性動態の特徴量(活性強度、活性化の頻度など)を数値解析により抽出する。同様にしてMEK阻害剤抵抗性癌細胞の分子活性動態の特徴量を比較し、MEK阻害剤抵抗性増殖を制御する分子活性動態を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
小額物品購入時の端数分である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求の助成金と合わせて物品購入に充てる。
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