膵島の重要な生理機能であるグルコース濃度に依存したインスリンの分泌の新たな評価法として、Microelectrode array (MEA)を用いた細胞外電位計測法の確立を目的とした。昨年度の成果として、ラット及びマウスより単離した膵島の細胞外電位計測が可能になったので、本年度はヒトiPS細胞由来膵島の細胞外電位計測を行った。電極に接着されたヒトiPS細胞由来膵島を3 mMまたは15 mMの異なるグルコース濃度で刺激をした時の細胞外電位を測定した結果、膵島の細胞内Ca2+の変動に伴う間欠的なスパイク群の発生を測定することができた。しかし、単離膵島に比べて電位変化のシグナルは弱く、また他系譜の細胞に由来すると思われるノイズが大きく、定量的に測定することは困難であった。分化誘導膵島のインスリン分泌機能を向上させるための成熟化、さらには高純度の細胞を取得するための培養法の確立が必要であると考えられる。 研究期間全体を通じての次の成果を得た。①Laminin-5のコーティングによる電極への細胞接着性を向上せせることにより、単離膵島を用いた細胞外電位測定系を確立した。高速フーリエ変換を用いた周波数解析を行い、膵島の細胞内Ca2+の変動に伴う間欠的なスパイク群の発生を測定することができた。②ヒトiPS細胞由来膵島を用いた測定では、細胞外電位の測定が部分的には可能であったが、分化細胞の改良が必要であることが分かった。特に、分化誘導の際に生じる他系譜の細胞は正確な細胞外電位測定の障害になるため、高純度な膵系譜の細胞を得るための培養法が必要である。解決方法の一つとして、膵前駆細胞を効率的に増幅させる純化培養法を新たに確立した。
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