「分化」とは、生体を構成・維持するために細胞が特殊化するプロセスであり、分化誘導過程では、細胞の形状、代謝活性、遺伝子発現パターンなどに大きな変化がもたらされる。現在までに細胞の分化を制御する分子の同定やその機能解析を中心とした研究が盛んに行われてきたが、本研究では、脂肪分化をモデルに用い、分化に伴うスプライシング変化を見出し、そのスプライシング反応を調節することで分化を制御できるかという、スプライシング制御を中心とした脂肪分化のメカニズムの解明を目的とした。 昨年度はオープンアクセスになっているRNA-seqデータを用い、最も脂肪分化への運命決定がなされる初期段階に焦点を当て、細胞内の遺伝子発現を網羅的に解析した。その得られたデータより、スプライシングアイソフォームの変動パターンをクラスター分類し、脂肪分化に伴う選択的スプライシングの変化を捉えようと試みた。今年度はこの大規模解析から得られた知見に基づき、RT-PCRによる検証を行った。さらに、研究過程において、スプライシングアイソフォームの発現割合に変化をもたらすには、転写と協調することが必要であると示唆される結果が得られた。そこで、前述のRNA-seqデータを用いて、分化過程の遺伝子の発現制御に関与する転写因子の推定を行い、423個の転写因子に絞り込むことができた。 今後、これらの転写因子の発現パターンが標的遺伝子のスプライシング変化と相関しているかを検証し、脂肪分化におけるスプライシング変化の生理的意義を解明していきたい。
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