研究課題/領域番号 |
16K21129
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
下出 紗弓 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特別研究員(PD) (90772103)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内在性レトロウイルス / ゲノム / ネコ / 多様性 |
研究実績の概要 |
本研究はイエネコゲノム上の内在性レトロウイルス(ERV)を同定し、これらが宿主の多能性に与える影響を明らかにすることを目的とした。先行研究によりネコのERV配列の一つであるRD-114ウイルス関連配列(RDRS)7種類のうち、すべてのイエネコが保有しているのはC2染色体に位置する1つのRDRS(RDRS C2a)のみであり、イエネコが中東から世界各地へと拡がる中で新しいRDRSを獲得したということが推測された。 昨年度の研究成果より、日本国内においても地域間で、同じアジアでも国間で新しいRDRSの保有率に差がみられることに着目しさらに調査を進めた。本年度は沖縄24匹、関西27匹、モンゴル13匹、シンガポール17匹の雑種ネコについて調査を行った。新しいRDRS保有率調査はdifferential PCRにより行ってきたが、PCR酵素の生産工場の変更に伴い以前までのプロトコルではLot差がみられるようになってしまったため、新しいプロトコルを確立した。 アジア各国に生息する雑種ネコにおける新しいRDRS保有率は、北部に位置するモンゴルでは31%だったが、南部に位置するシンガポールでは12%、ベトナムでは6%と陽性率が低く、日本では19%であった。日本国内においても沖縄33%、中国地方29%、関西地方12%と地域差がみられた。 中東で家畜化されたイエネコは、西回り、東回りの二手に分かれたとされる。日本へのネコの渡来は仏教伝来と同時期であったとされるが、それ以前の国内のイエネコの存在を示唆する遺跡が複数見つかっている。研究成果により、日本国内でも西回りのネコが多くもつ新しいRDRSを保有する個体もみられ、特に中国地方、沖縄で多いということがわかった。仏教伝来は北方ルート、南方ルートと2つの経路を介していたとされており、本研究結果は日本へのイエネコの到達経路が複数あることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PCR酵素の生産工場・品質変化に伴いプロトコルの再検討が必要となった。 また初年度の所属機関変更に伴い当初の予定通りに研究が進行できておらず、海外サンプルの収集も遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度予定していたネコゲノムからのRDRS全長クローニングおよび配列確認、座位特定ができていないため、最終年度に実施する。本年度はアジア国間、日本国内でも地域間にRDRS保有率に差異がみられたが、日本国内においても東北地方や関東地方の雑種ネコの調査は未実施であるため、サンプル収集・調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の品質変更に伴いプロトコルの再検討が必要となったほか、初年度の研究機関変更のためサンプルの収集等、当初予定していた一部の実験が実施できておらず大幅に遅れている。昨年度予定していた新規RDRSクローニング、座位特定が未実施であるため、研究期間を延長して最終年度に実施する。
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