本研究の目的は,腫瘍組織の可視化および治療を目的としてナノ粒子型新規光音響-磁気共鳴デュアルイメージング造影剤に対して抗腫瘍分子を導入し,集積率および治療効果を検討することである.この目的のもと,新規造影剤の合成および in vitro および in vivo における機能評価を実施した. 光音響-磁気共鳴デュアルイメージングプローブとしてジエチレングリコール含有酸化ガドリニウムナノ粒子を合成し,その表面被覆剤に対して,抗腫瘍剤であるドキソルビシンを共存させることで,粒子表面層に抗腫瘍剤の導入を行った.その結果,静電相互作用および疎水性相互作用により,抗腫瘍剤を仕込量依存的に造影剤ナノ粒子表面被覆剤と相互作用させ複合化できることを見出した.導入された抗腫瘍剤は腫瘍細胞が産生する酵素依存的に造影剤ナノ粒子から放出されることも明らかになった.培養細胞を用いた検討の結果,作製した複合化造影剤ナノ粒子は抗腫瘍剤依存的に細胞増殖抑制効果を示し,その効果は表面被覆剤分解酵素阻害剤によって抑制された.また,この複合化造影剤ナノ粒子を用いることで,動物実験において腫瘍組織の可視化が光音響および磁気共鳴イメージングにおいて可能であり,腫瘍増殖抑制効果も併せ持つことが明らかになった.複数の画像化法を用いることでより精確な検出が可能となり,さらに造影後に抗腫瘍効果も併せもつ,効果的なセラノスティクス用材料の合成指針を得ることができた.
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