研究実績の概要 |
生殖細胞系列は次世代に引き継がれる唯一の細胞系譜である。哺乳類では、生殖細胞の発生初期にゲノムワイドなエピゲノム変化が観察されるが、その詳細な実態および制御機構は明らかではない。本研究では、in vivo試料およびin vitro再構成系(Hayashi et al., 2011、Sasaki et al., 2015)を用いて、抑制的クロマチン形成に関わるエピジェネティック因子群のクロマチン相互作用領域および核内動態を可視化することで、生殖細胞で誘導されるエピゲノム変化の分子機序解明を目指すことを目的とした。前年度は、in vitro再構成系に用いる多能性幹細胞について、その細胞株による始原生殖細胞様細胞への誘導効率の差異を検討し、解析に使用する細胞株の評価・選定を行った。さらに、着目する抑制的エピジェネティック因子についてクロマチン免疫沈降法(ChIP法)の条件検討を行った。最終年度は、この条件検討に基づき、抑制的エピジェネティック因子4種類を含む計6種類のヒストン修飾基について、ChIP法を行い次世代シークエンス法によりデータを取得した。同様の実験を、細胞株間比較のため複数の多能性幹細胞株に適用し、解析を行った。今後は、クロマチンの核内動態・高次構造形成に重要な役割を担うことが考えられる構造因子について同様の解析を行い、さらに、in vitro再構成過程における変化を解析していく予定である。また、最終年度には、始原生殖細胞発生期の胎仔生殖巣を経時的に単離し、クロマチン核内動態に寄与する因子について免疫染色を行った。今後、エピゲノム変化とクロマチン核内動態の関係をさらに解析していく予定である。
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