感染症が疑われる臨床検体からの網羅的病原体探索法として、次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析法が用いられつつある。シークエンサーの著しいスループット向上により、大量のデータが得られるようになった。しかし、臨床検体中に含まれる全核酸のうち病原体由来のものは、多くの場合0.1%以下であるため、検出感度向上、低コスト化や解析の高速化を難しくしている。そのため本研究では、臨床検体中における病原体(特にウイルス)の濃縮法の開発に取り組み、より高感度、迅速かつ安価な病原体検出法の確立を目指した。 前年度に続き、ハイドロキシアパタイトを担体に用いた液体クロマトグラフィー(LC)によるウイルス濃縮・精製法の開発に取り組んだ。ノロウイルス、インフルエンザウイルスなどについて、各溶出フラクション時間別の溶出液についてリアルタイムPCRで確認をしたところ、ウイルス特異的に濃縮できていることがわかった。次世代シークエンサーによるメタゲノム解析では、ウイルス核酸の増加だけでなく、ホスト核酸の除去は不可欠である。今回の精製法において、どの程度のホスト核酸などを除去できているのかを確認するために、これらの検体についてメタゲノムショットガン解析を行った。濃縮前後のメタゲノムデータを比較したところ、濃縮作業により30倍以上のウイルス由来リードが得られていることを明らかにした。
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