近年急速に発達している次世代シーケンス技術とともに、メタゲノム解析による微生物探索があらゆる環境で行われている。これらの解析結果の多くは生物学的な性状解析や形態学的特徴が調べられることなく登録され、新規微生物の探索が実質困難になっている現状がある。本研究課題では、微生物叢を構成する個々の微生物の探索にFluorescence Activated Cell Sorting (FACS)や蛍光顕微鏡観察を駆使して、標的微生物を可視化、分取し、その核酸を増幅後、次世代シークエンスで解析する方法論の構築を目指している。 本年度は、全ゲノム増幅過程で生成されるキメラDNAのためにショートリードシークエンサーによるゲノム構築を余儀なくされてきた全ゲノム増幅産物について、ロングリードシークエンサーを用いることで高精度なゲノムを構築できるか検討した。まず、ゲノムが明らかになっている細菌株の全ゲノム増幅産物をPacBio RSIIでシーケンスしたところ、リードには既報と同等の頻度でキメラが存在することを明らかにした。de novoアセンブリで得られたコンティグについて調べてみると、キメラが大幅に減少し、アセンブリ過程で大半のキメラが除去されることを見出した。ロングリードだけでは完全にキメラを除去することはできなかったが、ショートリードを併用することで更にキメラを除去することができ、高精度なゲノムを構築することができた。
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