研究期間全体を通して、「交通環境内に運転支援システムを搭載した車両が存在するときに、『周囲の』道路利用者にどのような影響が及ぶか」という問いに関連した実験やWebアンケート調査を実施した。主な知見は次の2点である。第一に、接近車両が運転支援システムを搭載している場合に、その目前を通過しようとするドライバーはリスク回避行動が低下することが判明した。第二に、そのような行動の変化は、運転支援システムに対する信頼が高い場合に生じることが判明した。 最終年度においては、上記の知見に基づいて、運転支援システムの導入が道路利用者の行動に及ぼす影響についてモデル化を行った。特に、関連する先行研究を含めた、包括的モデルの構築を目指した。また、関連する研究を行っている国内外の研究者との研究情報交換を通じて、構築したモデルについて議論を行った。 実験や調査により得られたデータから、プロジェクトの目標について一定の知見を得ることができた。しかし、運転支援システムの導入が、当該システムの利用者やその周囲の道路利用者の情報処理メカニズムにどのように作用した結果、行動が変化したのかという、心的なメカニズムまで踏み込んだモデル化には至らなかった。この点については、今後新たに実験を行うことにより検証することを目指す。特に、視覚的に外界の情報を取捨選択する認知的機能である、「視覚的注意」の観点から実験を行い、さらなるモデルの深化を目指す。
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