研究課題/領域番号 |
16K21147
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柳田 亮吾 大阪大学, 工学研究科, 特任助教(常勤) (00756512)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イン/ポライトネス / 対人関係的談話実践 / 利害・関心 / 政治的談話 / 政治的コミュニケーション / 東京都議やじ問題 |
研究実績の概要 |
本年度は、イン/ポライトネスを資源と手段の観点から考察し、対人関係的談話実践において話し手と聞き手が有している利害・関心についての理論的な整理を行った。 イン/ポライトネスを資源とみると、話し手は社会的に高い評価を受けている希少な言語表現を身に着けることに利害・関心を有しているのに対して、聞き手は分類・評価を通して自分のもつ資源の価値を高めることに利害・関心を有している。インポライトネスを手段と捉えた場合、対人関係的談話実践は他者との関係性から生じる利害と他者からの評価によって生じる自己イメージについての象徴的な利害の二つに動機づけられている考えられる。他者との関係性から生じる利害については、他者の有する資源にアクセスすることによって利益が得ようとする場合(例えば、社会的立場の高い人に媚びることで口利きなどの見返りを得る)と、他者との関係性を破壊あるいは他者を排除することで自己と自己の有する資源を保護し、特権を維持しようする場合(例えば、ヘイトスピーチにおいて移民や外国人をフリーライダーとして排除しようとする)がある。他者からの評価によって生じる自己イメージについての象徴的な利害については、よい品行を提示することで他者からの信頼や尊敬、栄誉を得ようとする場合が考えられる。以上二つの利害・関心は表裏一体であり、特定の言語行動によって両者の利益が得られる場合もあれば、一方の利益の追求が追及されるあまり他方においては損害を被る場合があり、対人関係的談話実践は両者の利害の均衡を保つようなされる傾向にある。 本年度はこの論理的な枠組みを用いて、2014年度の東京都議やじ問題を取り上げそこにおける利害・関心について分析し、それについての研究発表と論文の執筆を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対人関係的談話実践を動機づけている利害・関心を理論的に整理し、東京都議会やじ問題の分析を行った点は当初計画していた通りたが、計画していた英Huddersfield UniversityのDaniel Z. Kadar教授、中国Guangdong University of Foreign StudiesのYongping Ran教授との共同研究の進捗が遅れているいるため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に収集した東京都議やじ問題のデータに加え、国会を起点とした政治コミュニケーションのデータを収集し、精緻化した対人関係適談話実践における利害・関心の分析枠組みをもとに分析を行う。 2017年度にInternational Pragmatics Associationにおいて共同研究者のKadar教授とRan教授とパネル発表を行い、野次についての考察を深め、対人関係的談話実践における利害・関心についての発展を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた英Huddersfield UniversityのDaniel Z. Kadar教授、中国Guangdong University of Foreign StudiesのYongping Ran教授との共同研究の進捗具合が芳しくなく、これに伴い予定していた国際学会での発表をすることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はInternational Pragmatics Associationにおいて前述Kadar教授とRan教授とパネル発表を行い、また、10th International Symposium on PolitenessとDiscourseNet Congress #2にて初年度の研究成果を発表する。
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