H30年度には、時間分解能に優れる脳磁図(MEG)を用いてデータの取得が完了した色彩刺激の記憶実験の解析を行った。ここでは、色彩の高次認知に関わる前頭前野の働きに着目し、どのような活動が生じるかを時間周波数解析によって明らかにした。さらに、脳に対する非侵襲刺激法である経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)を併用し、記憶成績で表される記憶表象の亢進または変容が生じるかどうかを検証した。 時間周波数解析の結果、前頭前野では4から7Hzのθ帯域の同期が高まることがわかった。さらに、直前に施行したtDCSによって、刺激呈示から270ミリ秒後に82-84Hzのγ帯域の同期が高められることがわかった。しかし、このγ帯域の同期の強さと記憶成績とは有意な相関がないことから、記憶表象そのものに影響を与えたとは考えにくい。この結果は、Frontiers in Human Neuroscienceに掲載された。前頭前野の果たす役割については、さらなる検討が必要である。また、前年度に実施した14名の健常成人を対象とした色彩調和判断時の脳機能計測データを、2018年12月に行われたACA2018(The 4th Asia Color Association Conference、タイ・チェンマイ)および平成30年度日本色彩学会関西支部大会(寝屋川市)にて発表した。 本研究課題で進めてきた色彩調和の神経基盤に関する成果の一部は、「情動と言語・芸術」の第2章として出版された。
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