本研究の目的は、病院外来部における混雑の実態を明らかにし、様々な混雑対策の効果をシミュレーションモデルにより予測評価し、混雑緩和に最適な戦略を提言することである。外来受診患者の増加により、病院外来部では慢性的な混雑状態が起こり、患者の衝突・転倒事故のリスク、効率的な診察の妨げ、緊急時の避難の遅れ等の問題が指摘されており、混雑対策の検討は重要な課題である。そこで平成28年度では、研究計画の策定、実施施設の協力依頼、倫理審査委員会への審査等を経て予備調査を1日及び本調査を5日間実施し、調査期間中全員(673人分)の来所状況に関するデータを収集した。 平成29年度は、収集したデータの分析を行い、病院外来の混雑が集中する時間帯で外来薬局の待ち時間が延長すること、高齢患者や薬剤の一包化を処方された患者、疑義照会の実施患者において待ち時間が長時間化することを明らかにした。実態調査のデータに基づきシミュレーションモデルを構築し、モデルの妥当性検証を行ったところ、予測値との誤差は、待ち時間の平均、最大値、最小値はいずれも5分以内であり、予測値との統計的有意差は見られず(p=0.3)モデルに高い妥当性が評価された。シミュレーションでは複数のシナリオ(薬剤師数の変更、自動調剤システム)の導入による待ち時間短縮効果を予測した結果、薬剤師の増員による待ち時間の緩和効果は予測されなかったが、自動調剤システムの導入によって、待ち時間は最大で50%の短縮できることが予測された。また、将来患者の高齢化を想定(一包化患者の増加)したシナリオ分析では、待ち時間は、最大で150%の増加が予測されたが、自動調剤システムの導入より、現状の待ち時間を維持できることが予測された。
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